『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の著者ヤニス・バルファキスによる連載。今回の話題は英国の欧州連合(EU)離脱騒動です。海外では強硬離脱派のボリス・ジョンソン英首相をかつてのバルファキス・ギリシャ元財務相に重ね、英国とギリシャのEU離脱騒動を同列に論じることが珍しくありません。バルファキス本人がその通説に反論します。
ボリス・ジョンソンが英国のEU離脱(ブレグジット)合意についてEU側と再交渉することを公約してダウニング街10番地(英首相官邸)の主となって以来、ブレグジット反対派の多くは、この新首相が「バルファキス流を踏襲」し、同じように失敗するとみている。
英BBCのカティア・アドラーは(EU本部のあるベルギーの)ブリュッセルから、EU当局者が「バルファキスの続編」という言葉を口にしたと報じている。つまりジョンソン英首相との「見当違いの会談」という意味で、ギリシャ債務危機の最悪期に、ギリシャ財務大臣を務めた毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい人物の場合も、やはりそのようだったと彼らは考えているのだ。
かつて英労働党政権で運輸大臣・文部大臣を務めたアドニス卿は、こうした比較にドイツ首相(メルケル)に対する敬意を盛り込み、次のようにツイートした。「メルケルは、英国をギリシャのように、ジョンソンをバルファキスのように扱った」。
ジョンソンはこうした対比を大いに面白がっているに違いない。というのも、2016年6月のブレグジット国民投票に向けた運動の中で、われわれが真っ向から対立する陣営にいたことを知っているからだ。ジョンソンが「離脱」キャンペーンの先頭に立ち、あの評判の悪いバスで英国内を遊説する一方で、私は労働党のジョン・マクドネル、緑の党のキャロライン・ルーカスといった政治家とともに英国内を飛び回り、ブレグジットの誘惑に抵抗するよう有権者に呼びかけていたのだ。
だが、狡猾なジョンソンは、そうした過去の対立など気にも掛けないだろう。