――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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中国が近く導入する「社会信用」システムは通常、欧米人にディストピア小説「1984年」の市民監視制度を思い出させる。だが実のところ、その主な標的は不正行為を犯した企業だ。米企業は覚悟しておく必要がある。
中国のコンサルティング会社、策緯諮詢公司(トリビアム)によると、この主要なデータ共有プラットフォームの情報の約8割は個人ではなく企業に関するものだ。2020年に本格導入されるシステムは、うまく施行されれば公正な競争環境が確保される可能性がある。しかし、規制違反はこれまでよりはるかに高くつくことになる上、貿易紛争の武器に利用される可能性もある。
中国ではプライバシーの概念は欧米よりも狭い。中国語が話せる外国人は、欧米で通常は見知らぬ人に尋ねないことを中国のタクシードライバーに詳しく聞かれることがある。所得や既婚かどうかなどだ。また非公開の電子的なやり取りも、実際は政府に筒抜けだ。
その半面、情報は社会にきちんと流れない。検閲や党を中心とした裁判制度が内部告発を厄介で危険なものにしているため、企業や役人が不正を働く隙がたくさんある。小規模企業や外資企業は、自分たちのために規則を曲げてくれるコネが役所にないため負け組になることが多い。