――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
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これは一大事なのか。今週発表された米製造業のデータが振るわなかったことでリセッション(景気後退)を懸念する声が再び高まり、株式相場は急落した。
数字自体はそれほど悪いものではなかった。このため、強気派が従来の見方をおおむね維持することはあり得る。しかし、市場が景気循環の末期に備える中でリセッション懸念が何度も浮上すれば、投資家の信頼感が損なわれ、結局はそれが景気減速を引き起こす要因となる恐れがある。
目立ったのは、貿易戦争の影響で製造業部門が苦しんでいるという論調だった。米供給管理協会(ISM)が1日発表した9月の製造業景況指数は2カ月連続で活動の縮小を示す水準となり、事前予想も下回った。特に落ち込みが目立ったのは新規輸出受注だ。
ただ、強気派の主たる根拠はほとんど変わっていない。問題はおおむね貿易に関係しており、米国内経済は好調なため、トランプ大統領が近く中国と合意を結べるのであれば、全ては良くなるだろうというものだ。
またデータには議論の余地もある。IHSマークイットが製造業を対象に実施している類似調査の数字は、9月に拡大を示し、8月より高い伸びを示した。ISMのデータにも一筋の光は見えた。輸出の受注が急減したにもかかわらず、新規受注は前月ほど悪くなかった。その一方で、在庫は急速に減っていた。在庫が減るということは、将来的な生産削減の必要性も減るという意味だ。
世界的な状況も以前ほど悪くなく、マークイットのグローバルな数字では先月の製造業の縮小はわずかだった(ただ、欧州の数字はリセッションを示唆している)。
それでも投資家は、より長く続いているISM指数の方に注目しているため、市場のバランスは大きく崩れた。そのこと自体が市場にとって打撃となり得る。投資家が懸念しているのはリセッションの有無ではなく、それがいつ到来するかだ。
ほとんど全ての市場は、景気循環末期に見られるディフェンシブ姿勢にシフトしている。最も明確なのが米株市場だ。景気拡大期に上昇ペースが速く、リセッション局面では下げ幅が大きい中小型株は、最初にリセッション懸念が浮上した約1年前を起点に大きくアンダーパフォームしている。