企業の足を引っ張る
未達成のペナルティー

 民間企業には「雇用納付金制度」が導入されていることも、障がい者雇用のインセンティブを高めていますね。

 雇用納付金制度は、常用雇用者100人以上の企業を対象に、法定雇用率に達していない企業から足りない分1人につき原則5万円の納付金を徴収する一方で、法定雇用率を超える障がい者を雇用している企業には超えている人数に応じて2万7000円の調整金を支給するという仕組みです。もちろんこれが企業の障がい者雇用への動機づけとなっているわけですが、実はこの制度には問題があります。

 厚生労働省は法定雇用率が達成できないことをペナルティーとして扱い、「未達成の企業は社名を公表する」とプレッシャーをかけていることです。結果、大企業ほど悪評を恐れて数合わせに走るようになります。資本力のある大企業が特例子会社を設立して熱心に障がい者を雇用した結果、目標を達成できない中小企業から徴収した雇用納付金が大企業に配分されるというおかしな事態も起きています。大事なのは日本全体で雇用を広げることなのですから、懲罰的な制度は今すぐやめるべきです。

 企業の特例子会社で、うまくいっているのはどのような例でしょうか。

 伊藤忠商事の特例子会社で、ランドリー事業を手がけている伊藤忠ユニダスは、現在では伊藤忠商事の社員寮からの洗濯物も請け負っていますが、もともとは社外からの受注だけで事業を行っていました。親会社べったりではなく、市場を意識した事業を心掛けているといえます。

 また、キユーピーの場合、特例子会社キユーピーあいを、あえてグループ適用していません。つまり、キユーピーの法定雇用率に算入していないのです。そのため、特例子会社以外のグループ企業でも積極的に障がい者を雇用しており、グループ全体の法定雇用率は3.3%(17年度、国内のみ、物流企業除く)を達成しています。日本航空も同様にJALサンライトという特例子会社をグループ適用せず運営しています。この方法は親会社の特例子会社に障害者雇用の責任を押し付けるといったフリーライドを防ぐための工夫といえます。

 ただし、今後、継続的に障がい者の仕事の領域を広げていくためには、やはり企業の本業に関わる障がい者を増やすことが大事です。牛丼チェーンの松屋フーズでは障がい者も店舗スタッフとして活躍していますし、キユーピーでも障がい者が工場で働いています。食品トレーの製造やリサイクルを手掛けるエフピコも、基幹事業で多くの障がい者が活躍しています。このように、企業の本業の現場に障がい者が普通に存在できれば、企業の成長とともに障がい者雇用数も増えていきます。

直接雇用にこだわらず
「みなし雇用」の導入を

 現在の制度は、どのような改善が必要でしょうか。 

 発想の転換が必要です。厚労省は「障がい者の直接雇用ありき」という考えをかたくなに崩しませんが、この前提では、人数単位の業務が集まらないと障がい者を雇えませんし、中小企業にとっては労務管理にまつわる負担が重くのしかかります。「雇用人数」ではなく、「仕事量」が増えるように制度を改革すればいいのです。

 具体的にはどういった制度改革が考えられるでしょうか。 

障がい者と企業が合理的につながる<br />「みなし雇用」とは
 

 法定雇用率に「みなし雇用」を算入すべきだと考えています。企業が障がい者を直接雇用しなくても、就労継続支援A型事業所(障害者が雇用契約を結んで生産活動などに取り組む福祉施設)に発注した業務量を法定雇用率に換算できるようにするのです。業務単位で発注できれば中小企業でも利用しやすいですし、マーケット全体が広がります。就労を希望する障害者の中には、能力が高くても長時間労働ができない人や、福祉的な支援を日常的に必要とする人も少なくありません。そういう人たちにとっても、特定の企業でフルタイム労働を求められるより働きやすいはずです。

 

 働き方改革でフレキシブルな雇用を実現する企業も増えています。そうした動きに障がい者も組み込んでいければ効果的ですね。

 その通りです。実際に、慢性的に人材が不足しているIT業界などでは、既に積極的にA型事業所に業務を発注している企業も少なくありません。法定雇用率にカウントするためではなく、業務を遂行してくれる戦力として障がい者の力を活用しているのです。本来ならば、こうした仕事こそ増やすべきではないでしょうか。 

 より合理的に障がい者に働く場所を提供できるわけですから、企業、障がい者双方にとってメリットがある仕組みだと思います。

 東京は企業の本社が集中しているので特例子会社も多く、障がい者が働く場が充実していますが、地方では生産性の高い障がい者でもなかなか就労できません。「みなし雇用」が制度化されればテレワークでの仕事を受注しやすくなり、地方の障がい者にとってもメリットがあると思います。