広範囲なマッチングで
スケールメリットを生かす

障がい者と企業が合理的につながる<br />「みなし雇用」とは
 

 しかし、「みなし雇用」の導入で、企業が直接雇用に消極的になり、障がい者と健常者の断絶を招くという懸念はありませんか。

 それはやり方次第です。大企業には、一定の基準までは直接雇用で賄うことを義務付けてもいいでしょう。また、A型事業所が受注した業務の全てが施設内で行われるわけではなく、クライアント企業に出向く業務も少なくありません。むしろ、特例子会社にばかり障がい者を集めて、市場と切り離された業務に専念させる方が、社会からの不可視化を招くのではないでしょうか。

 「みなし雇用」が制度化されれば、企業はA型事業所と業務を発注するようになるということですか。

 A型事業所は小規模なところが多いですし、それぞれ対応できる業務も限られています。また、福祉の専門家はいても営業の専門家がいませんから、企業のニーズにきめ細かく応えるのは難しいと思います。企業とA型事業所を仲介・マッチングする存在が必要になるでしょうね。

 それに、ビジネスとして成立させるには規模の経済が必要です。例えば、スウェーデンで2万人もの障がい者を雇用する巨大企業サムハルは、多くの重度障がい者を抱えながらも、受け取っている補助金を上回る給与を障がい者に支払っています。日本でも、企業とA型事業所を広範囲で仲介できる組織ができれば、こうした規模の経済性が期待できます。既存の業態でいえば、人材派遣会社やコンサル会社などに期待したいところです。A型事業所間の競争が活発になれば、生産性を上げる動機が生まれ、仕事の質も向上します。企業が障がい者を安く買いたたくことを懸念する人もいるでしょうが、業務量や委託料に応じて法定雇用率をカウントする以上、安く買いたたけば雇用率が下がり、困るのは企業なので、歯止めがかかるはずです。

 制度をフレキシブルにすれば、障がい者の活躍の場は大きく広がりそうですね。

 社員食堂で使う食材を障がい者が働く農場から仕入れたり、障害を持つアーティストが描いた絵画をレンタルして社屋に飾ったり……。いわゆる「労働」でなくても、さまざまな形で社会に障がい者の活動を生かすことは可能ですし、こうした経済活動も雇用率に算入してもいいでしょう。こうした柔軟な取り組みは、障がい者にとってだけでなく、社会全体のプラスになるはずです。


  1. ●聞き手|音なぎ省一郎

 

障がい者と企業が合理的につながる<br />「みなし雇用」とは
 

   ディーセントワークとは「働きがいのある人間らしい仕事」という意味で、国際労働機関(ILO)によれば「仕事は、権利、社会保障、社会対話が確保されており、自由と平等が保障され、働く人々の生活が安定する、すなわち、人間としての尊厳を保てる生産的な仕事」とされています。
 この連載では、心身にハンデを持つ人たちが、それぞれのディーセントワークを見つけることにストレスのない社会づくりを目ざし、それを仕組みとして実現するためのポジティブなアイデアを紹介していきます。

​*【第2回】につづく