高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役から関西電力の役員らが3.2億円相当の金品を受け取っていた問題は、関電にガバナンス(統治、統制)やコンプライアンス(法令順守)が欠如していたことを明らかにした。特集「関西電力 炎上!」(全5回)の#01では、関電の現役社員やOBの新証言から原発を巡る関電、元助役、地元建設業者の“黒い”関係を解明する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
江戸時代に横行した贈収賄を
地でいく関電と森山氏
江戸時代中期に幕府の老中として権勢を振るった田沼意次は、当時としては珍しい重商主義政策を採用した。財政悪化を食い止める一方、幕府の役人の間で賄賂が横行するなど、“金権政治”とやゆされた。
密室で代官と向き合った悪徳商人が差し出した菓子折りの下に小判が隠されていて、「お主も悪よのう」と代官が高笑いする時代劇のシーンは、その時代の象徴として描かれることもあった。
田沼意次の生誕300年に当たる2019年、令和という新しい時代を迎えた。
ところが、である。まさに時代劇を地でいくような驚愕の事実が関西電力で発覚した。
関電の八木誠会長(10月9日付で辞任)や岩根茂樹社長を含む役員ら20人が06年から18年の間に、高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から総額3.2億円相当の金品を受け取っていたのだ。
しかも高浜町への原発誘致に尽力し、地元で“天皇”と呼ばれていた森山氏は、関電から原発関連工事を受注した建設業者、吉田開発から手数料の名目で3億円を受領。関電、吉田開発、森山氏の3者間で原発マネーが還流していた。
関電は問題が発覚してからも、情報公開が不十分で対応が後手に回った。記者会見を開くたびに“炎上”し、当初は否定していた八木会長、岩根社長が辞任に追い込まれる事態となった。
そんな中、関電の現役社員やOBが、関電、吉田開発、森山氏の“黒い”関係を明かし、「森山氏に幹部らが役員らの口座番号を伝えていた」などと新たに証言した。
関電はこれまでの会見で、森山氏側からの金品の受け取りについて「個人口座には振り込まれていない」と疑惑を否定しており、新証言はこれを覆すものである。自らの意思で伝えていたならば、初めから現金を受け取るつもりだったことになる。