人事評価で会社がわかる
あなたは1日に、何回鏡を見ますか? シンプル・スキンケア社の調査では、女性は平均で1日8回鏡を見るという。多い人は、1日に20回も30回も鏡をのぞく。そういえば、最近、ケータイを見ながら化粧直しをする若い女性を見かけるようになった。
女性は鏡を見てうっとりするのが好きだからと、早合点するのは禁物だ。この調査では、驚くべきことに、75パーセントの女性が「鏡を見るのが嫌い」であり、さらに、39パーセントが「鏡を見て自信を失う」という。
男性についてはどうだろうか? データがないのでなんとも言えないが、だれでも毎朝1回くらいは、鏡を見るものだろう。ファッションとしてのヒゲではなく、ヒゲの剃り残しが目立つ中高年もいるから、一度も鏡を見ない強者もいるかもしれない。
鏡といってまず思い浮かぶのが、グリム童話の『白雪姫』だろう。「鏡よ、鏡。この世で一番美しいのはだれ?」
『白雪姫』に出てくる魔法の鏡は、王妃にありのままを伝える、正直で、まったく融通の利かない美の評価者である。自分がだれよりも美しいと信じている王妃にとっては、それが真実であっても、自分の期待に沿わない結果を、正直にストレートに伝えられるのは、相当傷つくものだ。
企業のための「自分を映す鏡」。たとえていえば、それが人事評価である。わが社ではどのような人材が大切にされ、どのような行動をよしとするのか。それをもっともわかりやすく従業員に示しているのが、人事評価なのだ。だから、評価の仕組みを見れば組織のことが見えてくる。
新聞社や情報会社が、人事評価のシステムに焦点をあてて、優良企業のランキングをしてくれれば、「働きやすい会社」(日本経済新聞社)や「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute)よりも、企業の価値観や行動指針の実態に即したランキングができるだろう。また、毎年の査定の時期に、あらためて自社の評価システムをよく眺めてみれば、パンフレットや雑誌記事には表れない本来の会社の姿が見えてくる。