自動車の2大市場である
中国と米国に「異変」
今や、世界トップの自動車市場となったのが中国であり、一方でトップを中国に譲ったといえども自動車大国である米国の存在感も健在だ。
近年、日本車メーカー大手のグローバル戦略といえば、中国と米国という2大市場でのシェアアップと収益性拡大が何よりも重要であり、この両面作戦は、連結業績における最大の“決め手”となっていた。
実際、これまでの日本の大手自動車各社の首脳らは「中国と米国の自動車市場は、世界でも圧倒的なボリュームを誇り、グローバル戦略において最も重視している」と口をそろえていた。
しかし、最近、世界最大の自動車市場国である中国では「異変」が生じている。昨年2018年の年間市場が1990年以来28年ぶりの前年割れとなったのだ。一方、中国に続く世界第2位の米国市場では、需要構造が大きく変容してセダンから多目的スポーツ車(SUV)やピックアップトラックに需要主体が移行している。
中国における異変の背景はいうまでもない。米中貿易戦争だ。
中国は、米中貿易戦争の影響を受けて景気の不透明感が強まり、昨年7月から新車販売の前年割れが続き通年では3%程度のマイナスになったもようだ。2009年から米国市場を抜いて世界最大の自動車市場となった中国だが、3000万台を目前にして足踏み状態となり、中国内の自動車生産供給過剰を指摘する声もある。
一方、1700万台市場の米国は、ピークアウトかと見られていた中で大型SUVやピックアップトラックの需要が旺盛だが、セダンが不振で販売奨励金(インセンティブ)が高騰したり、中古車市場等にも影響が出始めている。
このように自動車両大国が“異変”を示す中で、中・米が稼ぎ頭であった日本車大手メーカーでも、中・米戦略の練り直しを迫られている。