つるべ落としといえば秋の季語だ。この季節の落日さながらに、今年急落したのはシェアオフィスの米ウィー・カンパニー(ウィーワーク)の企業価値。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの主要投資先であるウィー・カンパニーの価値急落で、ほかの投資先企業にも疑問符が付く。特集「孫正義、大失敗の先」(全7回)の第4回Series Dでは、ビジョン・ファンドが投資する未上場企業に目を向ける。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
「リアルのソーシャルネットワーク」は
単なるおしゃれ系貸しオフィス
下図は、米ウィー・カンパニーの企業価値を大まかに時系列で追ったもの。今年1月の470億ドルから9月末の78億ドルへと、ジェットコースターさながらに急降下している。
創業者のアダム・ニューマン氏によると、ウィー・カンパニーが運営するウィーワークのオフィスは「ミレニアル世代の起業家が集う、現実世界のソーシャルネットワーク」。だから孫正義・ソフトバンクグループ(SBG)会長兼社長のようなハイテク分野のベンチャー投資家を引き付けてきた。その企業価値が急落したのは新規株式公開(IPO)を目前に、機関投資家から経営への辛辣な指摘が相次いだためだ。
黒字化できそうにないビジネスモデル、創業者やその家族に利益と権力が集中する不透明な企業統治……。経営実態を冷静に評価すれば、「おしゃれ系貸しオフィス。それ以上でもそれ以下でもない」(国内のベンチャー投資家)。企業価値はその企業が属する業種に大きく左右される。ハイテク企業ではなく、不動産仲介の赤字企業となれば、瞬く間に企業価値を落としたのも当然だった。
ウィー・カンパニー自体は創業者が退任し、経営の立て直しが進む。だがウィー・カンパニーの転落を目の当たりにした以上、ソフトバンク・ビジョン・ファンドとそれを立ち上げたSBGへの投資家は疑心暗鬼にならざるを得ない。ビジョン・ファンドが出資しているユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)の中に、第2、第3のウィー・カンパニーが潜んではいないか、という疑念である。