米シェアオフィス「ウィーワーク」の投資で巨額損失を計上したソフトバンクグループは、18兆円にのぼる連結有利子負債を抱える巨大グループだ。孫正義氏は、虎の子の中国アリババ株が支える構図の中で、まだゲームを続けられるのか。特集「孫正義、大失敗の先」(全7回)の最終回Series Gで“失敗のツケ”を探る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
孫氏の経営支える成功体験
「全力でこいだ自転車操業」
「ソフトバンクは今まで難しい経営の再建を何度もやってきました」。ヤフーBB、日本テレコム、英ボーダフォン日本法人、米スプリント――。ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が手掛けてきた事業はいずれも、採算性などに深刻な問題を抱えていた。こういった事業を連続して手掛けてきた孫氏は、確かに並の経営者とは一線を画する豪腕だ。
2001年に開始したブロードバンド事業のヤフーBBは、街頭で端末を無料配布してユーザー基盤を広げるという荒業で事業を急拡大した。この事業により企業財務が圧迫され、当時のソフトバンクは最終赤字が続いたが、孫氏は畳み掛けるように固定通信事業の日本テレコムを買収する。こちらも買収時点では赤字ビジネスだった。
赤字に赤字を重ねて拡大路線を走る孫氏に対し、側近幹部はたまらずこう進言したことがある。「社長、これでは自転車操業です」。ところが当の孫氏はまったく動じない。代わって進言した側近への答えは「自転車操業というならその解消の仕方を教えてやる。もっと勢いよくペダルをこぐことだ」というものだった。この表現こそ、孫氏の経営の本質ではないだろうか。
全力でこぐ自転車操業の範を示すかのように、孫氏は06年に1兆7000億円の巨費を投じてボーダフォン日本法人を買収する。当時のボーダフォン日本法人は、事業が低迷し「沈みゆく船」と呼ばれていたが、これを取得するために巨額の借金を背負ったのだ。