孫正義、大失敗の先seriesA
Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

「ぼろぼろの大赤字」で「反省」の弁を繰り返したソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。情熱を注ぐソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資で失敗した傷は深いが、わずか1週間後に明るみに出たのは、傘下のヤフーとLINEの経営統合だ。それはまさに、孫氏がお得意の「勝者総取り」のパワーゲームに他ならない。特集「孫正義、大失敗の先」(全7回)の第1回Series Aで、その動向を追った。(ダイヤモンド編集部  村井令二)

一堂に会したユニコーン
その後の暗雲を示唆する孫氏

 米カリフォルニア州パサデナのザ・ランガム・ハンティントンは、上品な大邸宅風の建築が美しい五つ星ホテルだ。ここで9月17~19日、世界の名だたる投資家と、成長著しいユニコーン企業が一堂に会した。ソフトバンクグループが10兆円を集めて立ち上げたベンチャー投資ファンド、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の会合だ。

 ファンドの投資先は9月末で88社を数える。関係者によると「ファウンダーズ・サミット」と名付けられたこの会合には、投資先のうち50社以上が集まったという。3日間の会合のうち投資先だけを集めたセッションで、孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長はこんな言葉を口にしている。

「キャッシュフローを重視して、(投資先の経営を)チェックしたい」

 企業マネジメントとしてはごく常識的なこの言葉は実は、約2カ月後に起こる「大事件」の伏線だった。

 11月6日、東京で開かれたソフトバンクグループの決算説明会。創業来最悪の、7000億円もの巨額赤字が発表された。大きな原因となったのは、ビジョン・ファンドの投資先で、シェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーだ。

ウィーワークにのめり込んだ孫正義氏
ウィーワークにのめり込み巨額損失を計上 Photo:Bloomberg/gettyimages

 ウィーの創業は2010年。孫氏はウィー創業者のアダム・ニューマン氏と16年に出会った。孫氏が米ニューヨークのウィー本社を訪れて滞在したのはわずか10分程度。多忙なスケジュールの合間を縫った瞬きのような訪問で、ウィーへの出資を即決した。

「頭がいいやつとクレイジーなやつ、戦いに勝つのはどちらだと思う?」と孫氏が問うと、ニューマン氏は「クレイジーなやつ」と答えた。これに対し孫氏は「正解だ。だが、君たちはまだ十分にクレイジーじゃない」と返したという。こんな軽妙なやりとりを交わしただけで、孫氏は巨額の出資を決めた。

 孫氏がこれまでウィーにつぎ込んだ資金は、総額103億ドル(約1.1兆円)に上る。この投資が9月末、一転して82億ドル(約9000億円)の評価損を計上し、ソフトバンクグループの業績に大きな打撃を与えたのだ。過大投資とずさんな経営で、キャッシュをまったく生まないウィーは、突っ込んだ金を雲散霧消させる「ザル会社」だったのだ。