年末年始、気を付けたいのは老親が起こしがちな事故だ。特によく見られるのが、お正月料理に欠かせない餅を喉に詰まらせる窒息事故である。東京消防庁が2019年11月に公表したデータによると、過去5年間、東京都内で餅、だんご、大福といった粘り気の強い食品を喉に詰まらせ救急搬送された人は毎年100人前後に上る。見た目も気持ちも実年齢より若々しい高齢者が増えているとはいえ、体の機能の衰えは否定できない。では、窒息事故に限らず、老親を不慮の事故に遭わせないために、子どもとして何に気を付けるべきか? 国際医療福祉大学熱海病院検査部・〆谷直人部長に聞いた。(聞き手/ライター 羽根田真智)
餅の安全な食べ方3カ条
「小さく」「喉を潤す」「よく噛む」
――お正月になると急増するのが、餅による窒息事故です。「まさか自分の親に限って」という気持ちもあるのですが、やはり注意すべきでしょうか?
餅による窒息事故は、高齢者ではどの人においても危険があると考えた方がいいでしょう。高齢になるほど唾液の量が減り、歯の機能が衰え、噛(か)む力や飲み込む力などが弱くなるからです。
これを防ぐための餅の安全な食べ方として、「餅は小さく切っておく」「餅を食べる前に、先にお茶や汁物を飲んで喉を潤しておく」「餅はよく噛んで、唾液とよく混ぜ合わせてから飲み込む」の3つが挙げられます。
──万が一、窒息事故が起こってしまった場合は、どうすればいいのでしょうか?
まずは窒息にいち早く気付くことです。日本医師会救急蘇生法では、「親指と人差し指で喉をつかむ仕草は、窒息のサイン」としています。高齢者の応急手当てとして、後ろから引くようにへその上あたりを圧迫する「腹部突き上げ法」を優先して行います。