『レンマ学』で
じっくりと深遠な世界に浸る

レンマ学
『レンマ学』 中沢 新一 著 講談社 2700円(税別)

 次に紹介するベストセラーは、ちょっと読み解くのがハードかもしれない。『チベットのモーツァルト』『アースダイバー』などの著作で一世を風靡(ふうび)した中沢新一氏の新刊『レンマ学』(講談社)だ。表紙はシンプルだが、おそらくこの数年で、これほど深遠な内容を扱った一般書はないのではないか。

 本書は「レンマ」を論じた本である。そもそも、レンマとは何か。古代ギリシャでは、「理性」という言葉に二つの意味があった。一つは「ロゴス」であり、もう一つが「レンマ」だ。ロゴスは聞いたことがあるだろう。通常「論理」と訳される。物事を因果関係で捉え、明確に整理して考えることだ。

 レンマは、一言で言うと「ロゴス以外」だ。いや、本書によるとロゴスも含む「全体」がレンマなのだ。ロゴス以外のレンマでは、物事を因果関係で捉えない。すべてのものはつながっており、無秩序で流動的。音楽や美術などの芸術、言葉の比喩(暗喩)、直観などはすべてレンマ的な思考により成り立っている。機械がロゴスででき上がっているとすると、レンマはきわめて人間的なものだ。

 おそらくこの説明で理解できる人は少ないのではないか。年末年始、せっかくの機会なので読んでみてほしい。気になるところを拾い読みするだけでも「目からうろこ」の連続となること請け合いだ。