パニック症、社交不安症、強迫症、神経質性不眠、病気不安症、不潔恐怖、全般性不安障害など「神経症」を主な適応としてきた森田療法。最近では、森田療法のコンセプトの一部を日常診療に取り入れる、いわゆる「森田療法的アプローチ」が、神経症以外のさまざまな症状に応用され、他診療科でも活用されています。第3回は、自律神経失調症(身体表現性障害)に森田療法的アプローチを実践し、効果を上げている、聖路加国際病院リエゾンセンター 心療内科部長の太田大介医師にお話を伺います。(談/聖路加国際病院リエゾンセンター 心療内科部長 太田大介、構成/医療・健康コミュニケーター 高橋 誠)
離婚以来、両足のしびれ、めまいが続く
40代後半会社員男性の苦悩
今回は、5年前から両下肢のしびれ、めまいに悩み続ける40代後半・会社員男性の事例をご紹介します。地方で生まれ育ち、地元の中核企業である、大手電機メーカーの事務職員として就職、30代で結婚して1児をもうけました。長年まじめに勤務を続け、職場の人間関係は良好、家庭も円満でした。
ところが、5年前に離婚し、一人暮らしに。生活の変化、心労が重なったせいか、両足のしびれ、めまいが頻繁に表れました。症状、心労から、抑うつ的になってもおかしくない状況でしたが、勤務は何とか続けていました。
しかし、半年前、東京に異動を命じられてから、勤務中に耐え難い強いしびれで、業務に集中できないことが度々ありました。「クリニックでの検査で『異常なし』と言われても、このまましびれやめまいが続くのはつらい」と訴え、産業医の紹介で心療内科医の太田医師を受診しました。