「引きこもり」支援者に根強い“引き出せばいい”という錯覚の罪引きこもりは家から外に引き出すべきという錯覚が、親や支援者の間には、根強く残る(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「そのままでいいんだよ」
で本当にいいのか

「引きこもりは家から外に引き出すべき」

 いまだに親や支援者の間には、そんな錯覚が根強く残る。

 昨年12月22日、東京大学で開かれたシンポジウム「発達障害とひきこもり」の場でも、象徴的なシーンがあった。

「家の中は“安心”だから“そのままでいいんだよ”という環境づくりで、本当にいいのでしょうか?」

 筆者ら登壇者たちの話に対し、都内の若者就労の支援者とみられる人からそう質問された。

「社会で傷つけられて恐怖を感じている当事者は、自宅以外に“居場所”がないという現実の中で外に連れ出されたら、いったいどこに行けばいいのでしょうか?本人の不安が取り除かれるまで、親として安心の場を保障してあげることは大事です」

 そんな趣旨の話をしたら、「実践的に、部屋に食事を届けるとか、ゲームをずっとやっていてもOKなのか?」「当事者のやりたいようにやらせておいていいのか?」と、しつこく聞いてきた。

 もちろん、この支援者の言うように介入は必要だ。しかし、その矛先が違う。生きるだけで精いっぱいの子の意識を変えようとするのではなく、憔悴した家族を支えて行かなければいけない。

 多くの親は相談に来ると、最初のころ「私ではなく、子どものほうを支援してほしい」「引きこもる子を外に出してほしい」などとよく言ってくる。しかし、当事者の中には、しんどさを紛らわすためにゲームで現実逃避せざるを得ない人もいる。それぞれの置かれた状況を受け止め、本人の目線に立って理解しなければならない。