中東有事の原油高が日本の経済成長や所得に及ぼす、看過できない影響米国とイランの対立激化による原油価格高騰が、日本経済に及ぼす思わぬ悪影響とは。その実態を徹底試算した(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 米国とイランの対立激化により、原油価格が上昇している。昨年9月のフーシ派によるサウジアラビアの石油施設攻撃や、イスラエルがパレスチナやイランへ強硬姿勢を示していたことなどから中東情勢に対する懸念がくすぶる中、1月3日に米軍がイランの総司令官を殺害したことをきっかけに、ドバイ原油は年明け以降1バレル=60ドル台後半で推移し、前年比で2割近く上昇した。

 その後、1月8日にイラクの米軍駐留基地がイランから数十発の弾道ミサイル攻撃を受けたが、米国側に死傷者が出なかったことなどにより、トランプ大統領はイランの抑制姿勢を指摘し、追加の武力行使を示唆しなかった。このため、さらなる事態の悪化は避けられそうだが、これまでの原油価格上昇が経済活動に及ぼす影響が懸念される。

 原油価格が上昇すれば、企業の投入コストが上昇し、その一部が産出価格に転嫁されるため、変動費の増分が売上高の増分に対して大きいほど利益に対する悪影響が大きくなる。

 また、価格上昇が最終製品やサービスまで転嫁されれば、家計にとっても消費者物価の上昇を通じて実質購買力の低下をもたらす。そうすると、企業収益の売上面へも悪影響が及び、個人消費や設備投資を通じて経済成長率にも悪影響を及ぼす可能性がある。