社会に配慮しながらも良い運用成績をあげたい投資家たちは、高水準の企業利益についてあまり懸念しない方がよい。むしろ、幹部への法外な報酬について懸念すべきだ。投資判断に環境・社会・ガバナンス(ESG)を採り入れる資産運用担当者は、所得格差について相変わらず見て見ぬふりをしている。だが、所得格差は重要な要素だ。国連が支援する投資家ネットワーク「責任投資原則(PRI)」は、所得格差が政治不安や債務に起因する金融不安を助長しかねないと警鐘を鳴らす。米国の国民所得のうち労働者への支払いではなく企業の利益に回る金額の割合が大いに注目されている。米国の最新統計によると、企業利益が過去最高水準に達した2019年、労働者が国内総生産(GDP)に占める割合は金融危機後の最低水準近くにとどまった。