日本企業、緊急事態宣言#2Photo:Sipa USA/JIJI

いまやすっかり“希少品”となり、どうにか入手しようと誰もが必死になっているマスクとトイレットペーパー。ドラッグストアにも連日、人が詰め掛けているが、実はこの2商品ではドラッグストアはちっとも儲からない。マスクに至っては、どれだけ作っても供給が追い付かず、メーカーを含めてもはやヘトヘト状態だ。特集『日本企業、緊急事態宣言』の#2では、コロナ特需に業界が翻弄される厳しい“現実”をレポートする。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

買い占めで売り上げ絶好調なのに
ドラッグストアが喜べない訳

「確かにマスクやトイレットペーパーを買うために開店前から人が並んでいるくらいですから、客数は増えていますよ。でも、だからといって必ずしも儲かるわけじゃないんです。だって、ドラッグストアにおけるトイレットペーパーの粗利益(=売上高-売上原価)って幾らだと思います?」

 3月に月6億枚の供給量が確保されたはずなのにいまだに入手困難なマスクと、「マスクに続いて品薄になる」とのデマが消費者の不安をあおり、本当に手に入りにくくなってしまったトイレットペーパー。新型コロナウイルスを巡り“希少品”となった二つの生活用品を確保するため、ドラッグストアには連日、人が押し寄せている。

 それは数字を見ても明らかだ。例えば、ドラッグストア最大手のツルハホールディングスの3月(15日締め)の既存店客数は前年同月比23.6%増、2位のウエルシアホールディングスの3月のそれ(国内ドラッグストア)は同11.9%増と大幅に増加しており既存店売上高はどちらも好調に終わった。

 にもかかわらず、ある大手ドラッグストア幹部が冒頭のように“問い”を投げ掛けるのは、足元の二大売れ筋商品ではちっとも儲からないからだ。前出の二強ドラッグストアの既存店客単価だけを見てもそれぞれ同7.4%減、5.8%減と下落している。マスク入荷時期を問い合わせる顧客への対応などにかかる人件費を考えれば、販売効率の良い商品とはいえない。