年収が徐々に上がっていく30代、40代。老後を考える上では、この時期に少しずつ貯め始められるかが重要だ。しかしながら、子育てやマイホーム購入など出費がかさむ時期でもある。
共働きで3児を育てる上田家は、世帯収入は決して少なくないのに、毎月の貯蓄が月1万円のみ。老後資金に不安を抱いているという。共働きでも貯まらないのはなぜなのか。背景には、家計に占める教育費の大きさや、共働きならではの「不干渉」の問題があるという。解決法を探った。(ダイヤモンド編集部 笠原里穂)
収入が教育費に消えていく
「稼いだお金がほとんど食費や子どもの塾代、習い事の費用に消えていく。数年前まではもう少し余裕があったはずなのに……」
愛知県に住む40代の上田加奈子さん(仮名)。普段は忙しくてなかなか直視できていなかった家計を振り返り、ため息をついた。
加奈子さんには自営業の夫と、春から中学3年生になった長男、中学1年生の次男、そして小学1年生の長女の3人の子どもがいる。加奈子さん自身は、看護師としてフルタイムで病院に勤務している。夫婦共働きで、世帯収入としてみれば決して少なくはない。
確かに、子どもたちが小さかった頃は生活費のやりくりをしたのち、月にいくらかは貯蓄に回すことができた。しかし、長男が中学に上がったあたりから、だんだん「貯蓄に回すお金が用意できなくなった」(加奈子さん)。実際、手取り年収380万円の加奈子さんが昨年給与から貯蓄できたのは、職場で月1万円ずつ積み立てた計12万円のみだった。
「長男の塾代には毎月2万5000円かかっていますが、春から中学生になる次男にも同じ額がかかると思うと……。塾に入れるべきか、ちゅうちょしてしまいます」
老後2000万円問題など、メディアでは老後のための資産形成の必要性がさかんに喧伝(けんでん)されている。わが家は大丈夫だろうか、と不安が頭をよぎるが、それよりも目の前の子どもたちのためのお金が必要だ。自分たち夫婦の老後資金は二の次。全く考えられていない。