新型コロナウイルスの感染拡大でも、需要がそれほど落ちないと高をくくっていた電力業界が一転して苦境に立たされている。その引き金を引いたのは、経済産業省のある要請だった。特集『日本企業 緊急事態宣言』の#9は、体力が乏しい弱小電力会社の資金繰りが一気に悪化し、倒産の危機にひんする様をレポートする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
電気料金支払い猶予の対象を拡大
新電力幹部「まずいことになる」
安倍晋三首相が新型コロナウイルスの感染拡大防止へ緊急事態宣言を発した4月7日、電力業界を所管する経済産業省・資源エネルギー庁の電力産業・市場室長から国内の電力会社に対して一斉に電子メールが送られた。
主な内容は、コロナ危機で電気料金の支払いが困難な人に対して、その支払いを猶予するよう電力会社に要請するもの。実はすでに3月19日にも、同様の要請はあった。
新電力会社の幹部は今回のメールに目を通し、あることに気付いて背筋が凍り付いた。
「これはまずいことになる」