フランスのエドアール・フィリップ首相は先週、国内の経済活動再開を発表した際、こう警告した。「紙一重であって、踏み外してはならない。少し不注意が過ぎれば、感染は再び拡大し始める。少し慎重過ぎれば、国全体が沈む」と。フィリップ首相をはじめとする指導者が直面する綱渡りはただでさえ困難だが、極めて重要な情報が不足しているために一段と難解になっている。それは、どのようなソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)であれば、人命救済とそれに伴う経済コストのトレードオフが許容範囲に収まるのか、という情報だ。これまでのところ、ソーシャルディスタンシングで救われた人命の価値は、予測される経済コストを上回ると推計されている。だが常にそれが真実とは限らない。まず何より、推計値が変わってトレードオフの計算が一変するかもしれない。さらに重要なことに、多くの実施措置のうち、どれが死を回避する恩恵をもたらしているのか、またそのコストについても明らかではない。このため、より少ない経済コストで人命を救える可能性がある「リスクベースの」ソーシャルディスタンシングの必要性が重要になる。
コロナ封鎖解除、「リスク別」の対人距離がカギ
休校はコストが高いわりに恩恵が得られない可能性
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