――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター ***  フランスのエドアール・フィリップ首相は先週、国内の経済活動再開を発表した際、こう警告した。「紙一重であって、踏み外してはならない。少し不注意が過ぎれば、感染は再び拡大し始める。少し慎重過ぎれば、国全体が沈む」と。  フィリップ首相をはじめとする指導者が直面する綱渡りはただでさえ困難だが、極めて重要な情報が不足しているために一段と難解になっている。それは、どのようなソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)であれば、人命救済とそれに伴う経済コストのトレードオフが許容範囲に収まるのか、という情報だ。