連結売上高8兆円を超える小売りの巨艦・イオン。ジリ貧の本業を金融とショッピングモールの不動産事業で賄う収益構造だったが、新型コロナで多くのモールが臨時休業を強いられた。テナントの賃料減額は不可避で、収益の柱が大ダメージを受けそうだ。金融事業の収益確保にも大きな不安があり、巨額の借り入れの返済も迫っている。『小売り絶体絶命 百貨店・コンビニ・アパレル・外食』(全7回)の最終回では、イオンの不動産事業の収益試算と、今後の経営リスクを分析した。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
GMSがジリ貧で収益依存した不動産と金融
コロナ禍の影響をモロに受けて先行き不安
新体制を迎えて突然の危機――。小売りの巨艦・イオングループが、コロナショックで揺れている。創業家出身の岡田元也氏(現会長)に代わって3月に社長に就任した吉田昭夫新社長は、早くも試練にさらされている。
最初の難関は新型コロナウイルスの発生源である中国・武漢だった。1月、同地に出店しているイオンは、ショッピングモールこそ臨時休業したものの、食料品など生活必需品を販売するスーパーは、現地の行政当局の要請もあって営業を続行。人々の生活を支え続けた。
だが3月に国内での新型コロナの感染拡大が顕在化。中国各地で休業していたイオンモールが4月から営業再開となったのとは裏腹に、国内では政府の緊急事態宣言を受けて、一時は国内142のイオンモールの専門店部分と、「オーパ」や「フォーラス」など都市型ショッピングセンター22店を臨時休業するに至った。
ショッピングセンターやモールは、入居する専門店などのテナントが支払う賃料が運営会社の売り上げとなる。詳細は後述するが、賃料の一部は売り上げに連動して変動する歩合制で、臨時休業で売り上げがゼロとなれば、賃料収入も激減する。
ショッピングセンターやモールを運営するイオン子会社のイオンモールは、2020年2月期の営業収益(売上高)3241億円、営業利益607億円。売上高で見れば、8兆円を超えるイオングループの中ではわずかだが、営業利益で見れば、イオンの連結で2155億円の3分の1弱を稼ぎ出す。グループ全体で総合金融事業に次ぐ稼ぎ頭なのである。
一方、主力である総合スーパー(GMS)は低収益体質から脱却できないままだ。イトーヨーカドーや旧ユニーグループ・ホールディングスなど他のGMSが構造改革を進めているのに対し、イオンは住居用品やアパレル用品など、ニトリやユニクロなどのカテゴリーキラーが強みを発揮している分野に拘泥するなど、戦略の立て直しがままならない。そのため、グループ全体の営業利益をショッピングモールなどの不動産と総合金融事業に大きく依存する状態になっているのだ。
イオンモールは近年、中国や東南アジア(アセアン)地域での出店を加速している。ただ、売上高や営業利益の多くはまだまだ国内が中心だ。142店の国内イオンモール休業は大打撃となる。
5月13日に特定警戒都道府県を除いた地域の42のイオンモールの営業を再開できたことはイオンにとって朗報だが、その規模は全体の半数にも満たない。