悩みに悩んだグループ卒業。
裏側にあった想いとは?

――心に響いたフレーズのうち残り一つは何でしょう?

 もうひとつは、「自分の心に従えば、少なくとも誰かのせいにすることはない。成功しても、失敗しても、すべては自分の責任。そう思えば少しは気が楽になる。自分の人生なら、そうすべきじゃないだろうか?」というフレーズです。

「誰かのせいにはしない」というのは、私の中ですごく共感できた言葉だったので、記憶に残っています。

――そういう意味では、グループからの卒業、そしてソロアーティストとしての再スタートと、大きな決断をされたわけですが、どんな想いがあったのでしょう?

 その頃を振り返ると、まわりの大学の友人たちがちょうど就職活動中で、新たな道を見つけて歩んでいこうとしていた時期でした。だから、自身のこれからについても改めて考えるようになったんです。

 また、それ以前から、本当に身体的に限界がきていて。睡眠がとれずに夢なのか現実なのか分からなくなったり……自分の体がSOSを出していることに気づき、本当にギリギリの状態でした。

 そのような状況で、「私がこれから本当にやりたいことって何なんだろう?」と考えるようになりました。それこそ、物心ついたときからお仕事ありきで走り続けてきた人生だったので、余計にそう考えたのかもしれません。

 芸能活動という唯一の道だと思っていたものがなくなったとき、私自身にどんな気持ちが残るのかなって。そう考えたとき、一度立ち止まって、ゼロになって考えてみようと思ったんです。

――ゼロになってみて、どうでしたか?

 芸能活動を離れてからは食べたいだけ食べて、寝たいだけ寝て、これまでできなかったことを色々とやってみました。アロマ検定も取りましたし、ペン習字を習ったり、ミシンを買って洋裁教室に通ってみたり……そうやってお仕事から離れて、自分自身を見つめ直してみたんです。そうしたら、本当の「好き」「やりたいこと」が見えてきました。

 その一つが音楽でした。あと写真も。音楽は聞くのも楽しいけれど、やっぱり自分で歌いたいなとか。カメラを持って街に出たいなとか。それまでの音楽は「締切までに、この曲をやらなきゃ」という感じで接してきたのですが、縛られることなく音楽と向き合ったときに、やっぱり好きだなと思えたんです。

 音楽理論を本で勉強したりもしましたが、やっぱり面白くて。それで「やっぱり好きだ」と思ったから、もう一度、音楽の世界でやりたいと思いました。

――たしかに立ち止まることで、自分の大切にしたいものに改めて気付くのかもしれませんね。

 そうですね。ただ、立ち止まること自体、本当に勇気がいることでした。私も当時は立場上、なかなか人に相談できなかったので、いっぱい悩みました。でも、大学の友だちが就職や人生について考えているのを目の当たりにしたとき、正解はないんだなって思えたんです。

 立ち止まった結果、新しいことをやるのも素敵だし、今までいた場所がよかったと戻ってまた突き進むのも素敵なこと。そうして大人や社会の常識ではなくて、自分自身がしっかり考えて選んだ道であれば、どんな形であっても、それが自分にとっての正解になるんじゃないかなって。

「こうしなきゃ」ではなく「こうしたい」と寄り添って生きる

――新型コロナウイルスの影響で、社会全体が立ち止まらざるを得ない状況になってしまいました。有安さんは、どのように過ごされていましたか?

 ずっと準備してきたライブが中止になったり、ファンの方々にも会えず歯がゆい思いでした。でも、「今だからこそ、できることもあるのではないか」という感じで、気持ちの切り替えも比較的早くできたように思います。

 目標をすぐに決めて、「ライブでパワーアップした姿を見せたいから、毎日縄跳び100回!」ってベランダでひたすら跳んでみたり(笑)。でも、時間割まで決めたら、やっぱりちょっとしんどくて。「何時までにやる」っていうところまでは固めず、「今日はこれをやりたい」と思うものを箇条書きにして、気が乗る順にやっていくようにしました。

――気が乗る順っていうのが、いいですね!

 やっぱり「とにかく頑張る」は、短期戦だと効果的ですが、長期戦になるほどしんどく感じてしまいます。社会がどんなふうになっていくのかわからない状況で、ずっとそのモチベーションを保つのは難しいですし。こんな時期だからこそ、自分が「やりたいこと」を意識して、毎日を過ごすことができたら、いろんな発見があるかもしれないなと思います。

――最後に、今後ご自身の活動を通じて伝えていきたい世界観やテーマなどはありますか?

 音楽とか写真とか、枠にとらわれずに活動していければとは思っています。「こうしなきゃ」と必死になるより、「こうしたい」と思えるものがあることが、自分らしく生きていくためには大切なんじゃないかと、『あやうく一生懸命生きるところだった』からも教えてもらったように思います。

 またそのなかで、少しでも私がファンのみなさんの「こうしたい」の理由になれればいいなと。生きていると、毎日楽しいことばかりじゃなくて、しんどいことやイヤなこともあると思うんです。むしろ人生ってしんどいことや辛いことのほうが多いかもしれません。そんなときに、少しでも私の歌や写真などの活動を通じて「明日も頑張ろう」「ライブの日までこれをやりきろう」と思ってもらえたら嬉しく思います。