気付かされた「執着」することの怖さ
――読んでいて、特に印象に残ったフレーズはありますか?
本当にたくさんあって、読みながら付箋をたくさん付けたんですけど(笑)。その中でも次の3つは強く印象に残りましたね。
1つ目は「ほんの少し顔を上げて周囲を見渡すだけで、ほかの選択肢がいろいろとあると気づくのに、執着してしまうとそれが見えなくなる。たった一つ、この道だけが唯一の道だと信じた瞬間、悲劇が始まるのだ」というフレーズです。
私自身、何かに集中することは決して悪くないと思うんです。でも、たしかにそれが気付かぬうちに“執着”になってしまっていたら、怖いなと。
何かに没頭しているとき、もし少しでも「しんどいな」と思ったら、一度立ち止まって、少し顔を上げてまわりを見渡す。そんな心の余裕が大切だと改めて気付かされたように思います。
また、方向性としては同じかもしれませんが、「そうだ。本来、楽しむことが目的のなぞなぞに、僕らはあまりにも死に物狂いで挑んでいるのではないか? 答えを探すことだけに集中し、問題を解く楽しさを忘れではいないだろうか?」というフレーズも頭に残っています。
――たしかに、頑張ることは楽しいことばかりではないですが、気づくと楽しい側面を忘れてしまいがちですよね。
そうですね。私も結果を出すには、どれだけ辛くても頑張るのは当然だと思っていました。小さい頃から大人に囲まれてお仕事をしてきたので、同世代の友だちに比べても根性論的な考えが強いほうだったかもしれません。
たとえば大学に通っていた時、アルバイトが続かない友だちがいたんです。もちろん、その子にとっては大変なことがあったのだろうけど、心の中で「もうちょっと頑張ってみたら?」と思う自分もいて。
そのときは私も大学とお仕事の両立が正直大変で、それでも「根性だ!」「なんとしても卒業してやる!」って気合を入れて通っていたので、なおさらそう思えたのかもしれません。
でも今思うと、そういう根性論的な考え方だけでなく、もっと楽しみながら前に進む道もあったのかなと思います。
――大学を卒業したのは、ご自身の目標だったんですか?
はい、私の中で「やり遂げたい」という気持ちが大きかったですね。小さいころは、親から「勉強も頑張りなさい」と言われていたのですが、高校生くらいには何も言われなくなっていて、「もう大学はいいんじゃない?」と言われるくらいでしたから(笑)
あと、先ほどの執着の話ではないですが、お仕事だけが唯一の道だった自分にとって、電車に乗って学校に通うことや、友だちと課題に取り組んだりする時間は、心のバランスを保つ上でも大切な時間だったと思えます。
幸い、授業のフォローを友だちがしてくれたり、仕事場でもメンバーやスタッフさんが授業に間に合うように撮影の順番を調整してくれたり……と周りの方たちにも支えられて、やり遂げることができました。