コロナショックで苦しむ小売りの救世主として、中国で一気に導入が進むのが動画配信とネット通販の融合である「ライブコマース」だ。特集『ECのニューノーマル』(全8回)の#3では、オンラインとオフラインの垣根を大胆に越える新たなECの形を解剖する。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)
14兆円の巨大セール「618」
キーワードはライブコマース
中国の大型ネット商戦「618セール」が終わった。11月11日の独身の日に続く、中国第二の巨大セールだ。コロナ危機で落ち込んだ消費をどれほど取り戻せるかが注目されたが、果たして驚くべき数字が伝えられている。
中国EC(電子商取引)最大手のアリババグループは、セール期間の受注額が6982億元(約10兆6000億円)に達したと発表した。最終的にはキャンセルや返品の分が差し引かれるとはいえ、2019年の独身の日と比較しても2.6倍という驚異的な数字をたたき出した。
独身の日が24時間限定のセールなのに対し、618セールは5月下旬から約1カ月の長丁場という違いを考慮しても信じられないような金額だ。
中国市場のマーケティング支援を手掛けるトレンドExpressの濱野智成社長は「618に向けて、アリババはムードの盛り上げ、トラフィックの誘導、在庫の調達など入念な準備を積み重ねてきました。また、消費の復活を推進したい政府の支援もあります。その意味ではこの数字に違和感はありません」と話している。
中国EC2番手のJDドットコムも前年比33%増の2692億元(約4兆1000億円)を売り上げるなど好調だった。618セールでの日本企業の実績については、本特集#7『ユニクロ沈没!中国「14兆円商戦」で売れたブランドランキング』で詳述するが、本稿では618セールのキーワードとなった、新たな販売チャネル「ライブコマース」について紹介したい。
ライブコマースとは、動画のライブ配信とネットショッピングを融合したサービスだ。画面上にショッピングカートのアイコンが用意されており、動画アプリから別のアプリに移動することなく、そのまま買い物することができる。