コロナ禍は生活様式を変え、日用品の売れ行きも激変した。「マスク必須」の暮らしにより、口紅など一部の化粧品は売れなくなった一方で、消毒液などのニーズは急増した。特集『ポストコロナ「勝ち組」の条件』(全18回)の最終回では、花王の澤田道隆社長にポストコロナ時代の戦略を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 相馬留美)
「7掛け」の世界で
衛生関連などの足し算で1を目指す
――新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、どのような変化があったと感じていますか。
人が移動しない、外にも出ない、店も閉まっている状態から、「新しい生活様式」に変わってきたことで、いろいろなことが「7掛け(×0.7)」になると分かりました。飲食店に行けば席を間引くし、飛行機も1席空けて座る。こういうことが通常になるならば、どこも売り上げは従来の7掛け程度になります。
一方、オフィスの労働力も、人の間隔を空けたり、アクリル板を設置したりしていると7掛けになります。売り上げも利益も7掛けになったら給料も7掛けにしないといけない。
7掛けになった企業のビジネスを「1」に戻すためには、単純計算で1.5倍の人数と時間とコストをかけないといけなくなります。
7掛けになった社会の中で、まずは長時間の会議など、もともと存在した無駄を取り除くだけでも、1割くらいは取り戻せるでしょう。
もう一つはDX(デジタルトランスフォーメーション)のような新しい技術を用いることで、今までになかったものを生み出せればオンします。
そして、花王特有ですが、生活者の不安を解消するような製品にもっと注力し、衛生関連、感染症関係に対し、基礎研究も含めてポートフォリオのウエートをもっと高めていくつもりです。3割ダウンの社会の中で、1割でも2割でも足し算していけば、いつか元に戻ったときに「1」を超えていける。諦めるべきではありません。