環境科学者にとって、今回の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で明確になったことが1つある。「炭素排出量を減らすのがいかに困難か」ということだ。コロナ封じ込めを狙った自宅待機命令により、排出量は激減したものの、足元では経済再始動に伴い、急速に元に戻りつつある。「ネイチャー ・クライメイト・チェンジ」に掲載された環境科学者グループによる分析では、世界の人口の約3分の2がロックダウン(都市封鎖)下にあった4月、炭素排出量は前年の1日当たり平均と比べて17%減少していた。だが、6月11日までに、減少幅は5%に縮まった。この調査を主導した英イースト・アングリア大学のコリーヌ・ルケレ教授(気候変動科学)は「炭素量の減少は、すべての活動を停止したことによるもので、構造的な変革の結果ではない。だから人々が業務を再開すれば、排出量が元に戻らない理由はない」と話す。その上で、長期的に維持するには、政府が電気自動車(EV)など、低炭素技術を促す必要があると訴える。
コロナの副産物「環境改善」、経済再開で水の泡に
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