再開発が進む都市で次々と誕生しているスマートビルディング。省エネに加え、セキュリティ向上や混雑軽減などの新たなビル管理ニーズに対応する動きも進む。その一つが、竹中工務店の「人工知能(AI)を活用した次世代ビル管理システム」だ。機械学習による大型ビルの自動制御の試みは、例がないという。
多様化、複雑化する
ビル管理ニーズに対応する
竹中工務店が、「人工知能(AI)を活用した次世代ビル管理システム」の実証実験を開始したのは、2014年7月のこと。日本マイクロソフトが提供する機械学習システム「Microsoft Azure Machine Learning」と、竹中工務店のビル管理システム「ビルコミ」をクラウド上で連携。建物内で発生するさまざまなビッグデータを解析することで、最適なビル運用を自動制御しようという試みだ。
たとえば、空調の自動調整。混雑度によって室温が上がることを予知し、人が不快に感じる前に空調温度を下げることができる。また、災害時の避難計画にも役立つ。居場所に応じて、安全かつ迅速な避難経路への誘導が可能となるのだ。
竹中工務店がこうした自動制御によるビル管理システムの開発に着手した背景には、近年、ビルにまつわる管理ニーズが多様化し、かつ複雑化していることが挙げられる。大きくは次の3つだ。
①高齢化や少子化により、ビル管理に携わる人員の確保が難しくなり、クラウドによる集約管理や自動化への対応が求められていること。
②電力自由化による電力源の多様化などを受け、さらなる建物の高度化が求められ、それに対応する設備や管理システムも必要であること。
③IoT(Internet of Things)などの技術革新によって、さまざまな設備や環境の定常的モニタリングや、機械学習によるビッグデータ解析が、安価なクラウド環境の登場で容易になったこと。
「こうしたニーズの変化に対応していくためには、我々建設業界のプレーヤーだけでは限界があります。特にクラウド型のビッグデータ解析については、それを熟知したパートナーが不可欠。しかも、そのほうが圧倒的に開発スピードも早くなります。当社の『ビルコミ』をさらに進化させるために、新たなパートナーが必要でした」(児玉正孝・執行役員/スマートコミュニティ推進室長)