それに対して、テレワークの推進を図りたい部門は、しばしば経営層から「テレワークのメリットは何か」「メリットが感じられない」という発言を投げかけられおり、テレワークのメリットを説明する資料を作り、何度も説明を強いられています。しかし、経営層や事業責任者には響いていないことがほとんどです。
なぜなら、彼らの心の中にあるのは、「テレワークはなんだか嫌だ」「当社の良さが失われるのではないか」「業績に悪影響があるのではないか」という漠然とした不安だからです。テレワークの推進を図りたいならば、経営層などのこうした気持ちを踏まえて対応することが大事になります。
解決策として望ましいのは、言葉での説得ではなく「実際にテレワークでも組織運営が可能だと示す」ことです。経営層や事業責任者が抱いている懸念や不安を想像し、小さくても良いので自社でトライアルを行い、それらが杞憂であること、解決可能であることを示すのです。
今回の緊急事態宣言下のテレワークは文字通り「本番」となりましたが、一方で恒久的な実施への「トライアル」という側面も持っていました。しかし、急激に、一斉に、大規模に実施されたため、テレワークの難しさが極端に表れたのも事実です。これをもってそのまま恒久的な対応とするのは難しい企業も多いでしょう。
いったん原則出社となった企業では、今回の緊急事態下でのテレワークで見えてきた課題と解決策と副産物を、定量、定性情報で示し、「このような極端なテレワークでも組織運営できた」ことを示しましょう。そのうえで、仕事内容や状況に合わせて最大週何日までといった、今後の出社とリモートの良いバランスを議論し、改めてトライアルするのが大事になります。
【テレワーク定着を阻む壁(2)】
「業務を切り分けられない」という思い込み
2つ目は、「業務切り分けの壁」です。テレワークが進まない理由の一つとしてよく挙げられるのが、「当社は個人情報や機密情報を扱っている」「当社のお客様は対面でのアポイントを期待している」「私の仕事はリモートでできるような仕事ではない」から無理、というものです。確かにそういう面もあるかもしれません。しかし、このような理由でテレワークが進まない企業は共通して、テレワークの実施を「0か100か」で考えがちです。
まずは、「この業務はテレワークでも可能ではないか?」「この業務をリモートで実施するには、何を解決したらいいだろうか?」と業務の性格を知り、それぞれを切り分けて分解してみてはいかがでしょうか。すると、ある業務のこの部分はテレワークでも対応可能だとわかり、テレワーク定着のきっかけになるかもしれません。