【テレワーク定着を阻む壁(3)】
上司と部下のコミュニケーションに負荷
3つ目は、「コミュニケーションの壁」です。ここでいうコミュニケーションの壁とは、主としてマネジメント(管理職)の負荷が増えることへの懸念を指します。実際に、テレワークへの懸念や不安が大きい組織では、管理職がテレワーク下におけるマネジメントのあり方と自社のやり方に乖離を感じていることが多い気がします。
これまで目の前に部下がいた状況で行っていたマネジメント方法は、テレワークによって転換を迫られています。当社が2020年3月に行った調査でも、直接支援型マネジメント(部下の業務の進捗に細かく指導するような関わり方)において、テレワーク下での管理職の業務負荷が高いという結果が出ました。一方で、自律支援型マネジメント(部下が自律的に業務を進められるよう、必要な情報提供、リソースの取り付け、部下の心のケアなどで行う関わり方)では、業務負荷の関係性は見られませんでした。
テレワークが拡大・定着すると部下自身が自律的に業務遂行できることが求められるようになります。テレワークをソロワークとせず、会社や組織の方向性に共感しながら、自律的に業務遂行する部下を増やすための管理職の関わりが、今後はさらに求められるでしょう。
【テレワーク定着を阻む壁(4)】
IT化、モバイルツールの未整備
4つ目は、「IT化の壁」です。仕事を「テレワーク」で行う準備がツール面で十分でないことが原因です。2点目の壁「業務切り分けの壁」の中でも記載した「個人情報、機密情報が多いのでテレワークできない」という声は、IT化の壁でもあります。この壁は、主としてペーパーレス化とIT環境・モバイルツールの展開によって解消が可能です。
前者のペーパーレス化は、単に紙を電子化すればいいというものではありません。ペーパーレス化に至るには、業務内容や業務フローの見直し、電子化した書類の整理などを行う必要があるため、多くの部署の協力が不可欠です。多くの部署の協力が必要な改革に着手するくらいなら、今のまま業務遂行した方が良いという気持ちもわからなくもありません。
とはいえ、個人情報の多さや機密情報の多さは、もはやペーパーレス化ができない理由にはならなくなってきています。個人情報の宝庫のような業界でもテレワークが進んでいるのはその証左でしょう。また、ITツールの進化が、さまざまな業務プロセスを電子化することを可能としました。元も子もないのですが、ペーパーレス化は「やると決めるか」が大きいテーマです。ぜひ、これを機に着手していただきたいと思います。