「将来は事業規模でも5大リーグを目指す」「重視するのは入場者数、有料視聴者数、関心度」――。特集『激震!コロナvsプロスポーツ』(全12回)の#4では、コロナ禍での経営を含めて、ゴールドマン・サックス出身のJリーグの剛腕専務がダイヤモンド編集部だけに語った1万字のロングインタビューの後編をお届けする。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
「イニエスタを保有する」ことでの相乗効果
親会社が意志を持ってクラブ経営に参画
――新型コロナウイルス対策ではJリーグとプロ野球が対策連絡会議で一緒に議論しました。
サッカーのネットワークと、野球が持っているネットワークを共有する場をつくりました。開幕時期や入場解禁時期などの判断はそれぞれ別ですが、スポーツ界が横断的に助け合いをしようということです。濃厚接触者の定義を、一般に行政から言われている「1人が発症したら全員がもう2週間待機」とすると、興行が成り立たない。海外と同じように、自分たちでこういう判断をするというエビデンスをつくる必要があります。どういうふうに克服していくかは、野球界の事例を学んだら横展開できるし、逆に僕らにいい事例ができたら横展開できますから。
――検査体制が重要になりますね。
海外では検査結果が陽性でも、熱が出ていなければ本人しか休ませないような事例もあります。濃厚接触者は1メートル以内の距離でマスク等を着けずに15分以上話した人と言われていますので、サッカーにおける濃厚接触者の定義も大事になってきますね。
――スタジアム改革も重要ですよね。コロナ対応という意味でのスタジアム改革と、稼げるスタジアムへの改革。
日本は資本主義なので、まず投資があり、その資金で企業活動を行って利益を出し、拡大再生産して大きくなっていく。サッカーも例外ではなくて、最初にドンと大きな投資をする。例えばイニエスタ(元スペイン代表の世界的選手)を獲得するなどレピュテーション(評判)をつくったクラブは一時的にファンが増えて、そのうちの何パーセントかはそのまま残る。ただ、サッカーの弱点は、いい選手を取るために財務的にかなり無理をする場合があることで、それだと焼き畑農業的な側面があります。短期だけでなく、長期的な投資は成長のためにすごく大事で、スタジアムはその典型です。当面は満員の観客は難しいけれども、基本的には良いスタジアムの方が見やすいし、迫力が伝わります。コロナ後のスタジアム改革は再考が必要ですが、野球の広島東洋カープも2007年までは60億円台の売上高だったのが、09年に新スタジアムができた結果、観客が増えて、18年の売上高は約3倍の189億円になりました。
――イニエスタなどビッグな選手を獲得してという話もありましたが、逆に大物を呼んだことで経費がかさみ、赤字になるケースもあります。
そういうのもどう考えるかで、これはギリギリ言って大丈夫だと思うのですが……、例えば楽天さんのビジネスがヨーロッパを狙っているのであれば、イニエスタを保有する会社だということになれば、現地で相乗効果があるかもしれません。海外で、楽天さんはバルセロナのユニフォームの胸にロゴを入れていますが、大物選手の獲得も、広告宣伝費として十分払うに値することになるかもしれないじゃないですか。サッカークラブ単体だけの投資ではなく、本業も含めて多面的なメリットを生むのが一つの理想型だと思うんですよね。実際そんなふうに聞いていたりもします。親会社が意志を持ってクラブ経営に参画するのが、最近の大きな流れになってきています。
――フェルナンド・トーレス(元スペイン代表の世界的選手)の獲得など、攻めの経営が失敗して巨額赤字に陥ったサガン鳥栖については、どう評価されますか。