歯列矯正に自己投資ができる人とできない人の差
――『世界の一流はなぜ歯に気を使うのか』では、アメリカのアニメや映画とか見ていると、歯の矯正をしている子どもが頻繁に出てきますが、日本の作品ではほとんどないことを日本と欧米の意識の違いの事例として挙げていました。欧米と日本、それぞれ歯列矯正はどのような位置づけなのでしょうか。
稲葉:日本人の歯に対する意識って、二極化というのか、意識がものすごく高い人とそうでない人の格差が広がっているように感じます。そのいちばんの象徴となるのが歯列矯正じゃないでしょうか。
森下:確かに、経済力のある人のお子さんの歯列矯正は増えていますね。お子さんをきっかけに親子で歯列矯正を始める方もいます。でも、それはまだ一部。歯列矯正は自費診療ですから、やはり経済力が必要です。
稲葉:歯列矯正は、治療というより自分に対する投資の側面が大きいと思います。だから費用が高額になっても、その価値があると思えば投資する。そうなると経済的な成功が歯列矯正をする人のファクターになっているのが現実なので、そこに投資できる人は、自分の子どもにも投資して、それで成功すれば好循環になっていく。一方、経済的に歯列矯正に投資できない人は、自分の子どもにも投資できず、成功も遠のくという悪循環にはまってしまう……。
森下:アメリカで歯列矯正をするのが当たり前になっているのは、国民の大部分が加入している民間の医療保険に、歯列矯正の費用をカバーするプランが多いのも一因です。
稲葉:日本も保険がきくと違ってくるかもしれない。ただ、日本の場合、歯列矯正の意義がまだ十分に浸透していない。歯列矯正しているのは「恥ずかしい」、「隠したい」という意識が強いことも障壁になっているんじゃないでしょうか。ですから、例えばいっそお子さんや若い人は、“原宿系”じゃないですけど、カラフルな矯正用のマウスピースをして街を歩くみたいな、つまり歯列矯正もカラーコンタクトのような感じにカジュアルになるのもいいなと思います。
森下:“意識”って大切ですよね。
稲葉:最近は、男性も化粧品を使うようになって、いろんな商品が出ていますけど、“清涼感”ばかりがドンと全面に出ている。でも、男性だって、きれいになりたい、カッコよくなりたいという意識があるんです。それは恥ずかしいことじゃないんですよね。歯列矯正やホワイトニングは、女性や子どものためのケアじゃなく、男性にも必要。特に、一流の仕事を成し遂げたい、成功したいのなら、歯の美しさに対する意識を変えていくことは必要だと思います。