医学部に合格できたとしても難関はまだ残っている。肝心の医師国家試験に合格できなければ、医師になることはできないからだ。実は大学によって国家試験対策への力の入れ方には大きく開きがある。特集『アフターコロナの医学部・最新序列』(全10回)の#5では偏差値と国試合格率で「おトク」な医学部を判定した。(教育ジャーナリスト 庄村敦子、ダイヤモンド編集部 山出暁子)
医学部合格!で終わりではない
医師国家試験合格率が高い医学部はどこか?
晴れて難関の医学部に合格したとしても、それだけでは医師になることはできず、医学部では厳しい試験が続く。他学部に比べると、医学部は進級条件がかなり厳しいため、勉強しないと1年次から留年することになる。
さらに、臨床実習の前には、知識を問うCBT(医学知識評価の共用試験)と実技試験であるOSCE(客観的臨床能力試験)を受験し、合格しないと臨床実習に参加できない。6年次には、大学によって実施時期は異なるが、9~12月ごろに卒業試験を受ける。この試験に合格すると、医師国家試験(以下、国試)を受験できる。そうして国試に受かってようやく、医師になることができるのだ。
このように医師になるまでには、医学部に入るのも、国試に合格するのも一苦労。そこで、ここでは全医学部の偏差値と国試合格率から、少しでも“おトク”と思われる医学部をあぶり出してみる。その前に、まずは国試について実態を詳しく解説しておこう。
2000年の国試の合格率は79.1%だったが、01年以降は毎年だいたい9割前後。この数字を高いと感じるだろうか。国試は相対基準が導入された過酷な競争試験で、合格すれば4月から白衣を着て研修医として働けるが、不合格なら医師国家試験予備校に通うなどして、翌年またチャレンジすることになる。「約1割しか落ちない」という事実は、相当なプレッシャーになる。
20年2月8日と9日に行われた第114回の国試では、1万0462人が出願し、1万0140人が受験。合格者は9341人で、合格率は92.1%。トップ頭脳で超難関の医学部に入学したのに、799人もの受験生が不合格になっているのだ。
国試は医学の進歩によって難化傾向であることに加え、「ドボン問題」とも呼ばれる禁忌肢問題もある。この選択肢を選ぶと患者が死亡、あるいは重い障害が残る可能性がある行為や、医療倫理や法律に反する行為などが禁忌肢問題になりやすい。これらの危険な選択肢を4問以上選択すると、他の問題の正解率がいくら高くても不合格になる。
また国試では毎年のように、その年度に流行した病気が出題されている。研修医になったとき、流行している病気に対する知識が必要不可欠だからだ。現在、新型コロナウイルス感染症がパンデミックとなっているが、21年の国試に出題されるかもしれない。
偏差値と医師国家試験の
合格率は相関なし
医学部受験では、偏差値や合格可能性を見て、合格できそうな大学を受験する。8月28日配信予定の本特集#6『医学部が「過去25年で今が最も狙い目」な理由、21年度の入試動向を解説』で詳報するが、国公立大では東大や京大など旧帝大の偏差値が高い。また、私立大は本特集#3『医学部にカネなし学力なしでも入れる!「秘伝ルート」を徹底検証』で示したように、学費が安い大学の偏差値が高い傾向にある。
それでは、大学の偏差値と国試の合格率が相関しているかといえば、そうではない。大学入試で必要とされる学力と、国試で必要とされる学力は異なるからだ。医学部は、大学入学後に解剖学、生理学などの基礎医学を横一線でスタートし、学び始める。各医学部の6年間の教育や個人の努力が国試合格に大きく影響する。では、入るときの偏差値はあまり高くないのに、国試の合格率がいい医学部はどこだろうか。次ページの表は医学部の偏差値を縦軸に、20年の新卒の国試合格率を横軸に取り、各医学部の位置を示したものだ。