TikTokの大問題#1Photo:Bloomberg/gettyimages、NurPhoto/gettyimages

トランプ米大統領のTikTokに対する強硬姿勢で、ソフトバンクグループが揺れている。TikTokの運営会社、中国バイトダンスの主要投資家として巨額の出資をしているからだ。特集『ここからが本番 TikTokの大問題』(全5回)の#1では、ソフトバンクが抱える中国リスクに迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

TikTok米国切り離しに
揺れるソフトバンク

「こうなった以上、むしろ早く米国を切り離して早期のIPO(株式上場)を目指した方がいい」――。ソフトバンクグループの内部から聞こえてくる声は妥協の産物なのかもしれない。

 フェイスブックやインスタグラム、YouTube(ユーチューブ)など米国製のアプリをしのいで急速に台頭する中国発の動画投稿アプリTikTok(ティックトック)。

 その排除の意思を鮮明にするトランプ米大統領は8月14日、運営会社のバイトダンスに対し、ティックトックの米国事業を90日以内に売却するよう命じた。

 ソフトバンクにとってバイトダンスは、10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の重要な投資先である。米シェアオフィス「ウィーワーク」運営会社が巨額損失を計上し、その他の投資先の多くもコロナ禍で経営が悪化する中、巣ごもり需要で爆発的にユーザー数を拡大させる中国アプリの運営会社は数少ない「優良銘柄」だ。

 特にティックトックの米国事業はバイトダンスの成長領域。しかし、トランプ氏の命令が正式に下された以上、もはや米国を諦めて、残された企業価値を最大限に守り抜くしかなさそうだ。

 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、コロナ禍でビジョン・ファンド事業に負った傷が癒える間もなく、米中対立の激化に翻弄されることになった。