中学受験マンガ『二月の勝者』とコラボした『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』が現在話題の教育ジャーナリストのおおたとしまささんと、『中学受験 大学付属校合格バイブル』の著者で中学受験カウンセラーの野田英夫さん。今、話題の本の著者であり、長らく中学受験業界を見てきたお二人に、「中学受験」の最近の傾向や、人生への生かし方についてお聞きしました。第3回は、「コロナ休校による来年度の中学受験への影響」について。(構成 井上敬子)
――今年はコロナで小学校が3ヵ月間くらい休校になりましたね。大手塾も授業を見合わせたところも多かったと聞きますが、来年の中学受験にどんな影響がありますか?
野田 コロナ休校中は、やる子はやるし、やらない子はやらないで、差が激しくついたんじゃないかと思います。もともと上位2割は塾がなくても勉強する子達なんで、その子たちはコロナがあろうがなかろうがあまり関係ないんですよね。
おおた むしろそういった一部の子は、休校になって、受験勉強の時間が増えてラッキー、夏休み二回分得したみたいな感覚でしょうね。
野田 でもそれは本当にごく一部の子で、大多数の子は心配ですね。うちの塾では早々にオンライン授業に切り替えて授業をやりましたが、意外にうまくいきました。自分自身はもともとオンライン否定派だったんですが、子どもたちの適応力には驚きました。
おおた この前の朝日新聞のコラムでも書きましたが、一部の子はどんどん自分で勉強を進めたと思いますが、大多数の子は、この期間に、やらないといけないと分かっていながらできないという“ダメな自分”と向き合い続けた3ヵ月だったと思うんです。
野田 子どもって自分で分かっていますからね。言わないけどわかってる。
おおた すごく傷ついてると思うんですよ。人から傷つけられたのではなく、「頑張らないとダメだと分かっているのにできない自分」と向き合わなきゃいけないのって本当につらいから。それがあまりにも長すぎたので、子どもたちの心が心配ですね。
野田 家から出られない中、親御さんたちも在宅ワークでイライラしますしね。ただでさえ、ストレスフルな中学受験ですが、今年は例年の比じゃないでしょうね。
おおた ある作文コンクールの審査員をやっているんですが、子どもたちの作文に、去年に比べて明らかに躍動感がないんです。頭の中だけで言葉をいじってる感じなんですね。コロナ期間中に書いたものだと思うんですが、これは理屈じゃなくて、つい出ちゃうんだと思うんですね。言語化や意識化できてない何かしらの強いストレスを感じているんだと思います。
野田 それこそ、教育虐待のようなことも起こりがちですよね。長年、受験指導をしていると、数年に一度、親が勉強しない子どもに暴力をふるうご家庭のケースに直面することもあります。今年はそういった事例が増えているんじゃないかと心配です‥‥‥。
おおた まさに「二月の勝者」に出てくる、島津くんの家みたいなところだと、大変ですよね。親から始終監視されて、勉強やらされて、何とかサバイブできる子はまだいいけど、壊れる子もいるかもしれませんし。夏休みも短くなって、その中でカリキュラムもこなさないといけないし、さらにこの猛暑。本当に、無理しないでって、心底思いますね。
野田 大手塾の子たちは、自分の体重の1/3もある重い教材をもって、この猛暑の中、通うだけでも大変ですからね。親御さんもまずは子どもにかかっている負担を理解してあげてほしいですね。