配当狙いでも、高い利回りだけで銘柄を選ぶのはNG。業績が悪化すれば、減配や無配転落の可能性があるからだ。では、中長期で高配当を享受でき、株価が値下がりしにくい銘柄はどうやって選べばいいのだろうか。『コロナ直撃決算 勝者と敗者』(全13回)の#8では、厳しい条件を突破した「下値が堅い高配当株」を紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
「利回りの高さ」だけで選ぶのはNG
日産自動車やJTの教訓に学ぼう
株式投資の利益には、値上がり益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)がある。日本企業も株主還元を重視するようになり、配当利回りの高い銘柄が増えてきたが、配当狙いでも「利回りの高さ」だけで選ぶのは避けた方がいい。高配当株の中には業績悪化により株価が低迷して、結果として配当利回りが上昇しているケースが少なくないからだ。
これは日本を代表する大型株であっても変わらない。下図は高配当株の代表格だった日産自動車と、現在も高配当株として個人投資家に人気が高いJTの配当と株価の推移だ。この2社に5年前に投資をしていた場合、同期間の日経平均株価は20%以上上昇したにもかかわらず、受取配当金の合計よりも株価下落による損失の方が多い。つまり投資成績はマイナスになっているのだ。
日産の配当利回りは2019年初めに6%超まで上昇したが、これは業績の下方修正を織り込んで株価が下落した結果である。実際、日産は19年の3月と4月に2度の下方修正を発表して、19年度は連続増配が9期でストップ。6700億円の最終赤字予想の今期は無配に転落して、株価は2年半で3分の1程度まで下落した。
JTは16期連続増配がストップしたとはいえ、現在も配当利回りは7%台中盤と高く、全銘柄の中でもトップクラス。だが、株価は国内外のたばこ販売の苦戦や、環境負荷などを重視するESG投資の世界的な流行が逆風となり、18年初から40%以上も下落した。また、減益にもかかわらず増配を続けたため、配当性向も96%まで上昇。来期以降は減配リスクもある。
配当性向は利益のうちの何%を配当に回すかを表す指標(下図参照)。高配当株に投資をするのであれば、減配リスクを減らすためにも必ずチェックしよう。配当性向の上昇には限界があり、長期の増配継続には、業績が右肩上がりで成長する必要がある。
この2社の教訓から学べることは、減益トレンドの高配当株への投資は危険ということだ。日産のように業績の低迷が続けば減配を余儀なくされ、さらに株価が大きく下落するリスクもある。