三菱UFJ銀も首位陥落
三井住友銀「国内営業力」の復活
首位陥落は、銀行業界でも起きた。20年3月期に三井住友フィナンシャルグループ(単体は三井住友銀)が三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG、単体は三菱UFJ銀)を抜き、純利益トップに躍り出たのだ。
MUFGの敗因は、買収した東南アジアの銀行の減損処理で多額の損失を計上したこと。いわば敵失での勝利に、三井住友銀の行員は「瞬間風速の勝利にすぎない。海外では、三菱のブランド力も旧東京銀行時代のネットワークも強く、MUFGは底力がある」と言う。
だがそんな三井住友銀が自信を深めているのが、国内営業力である。もともと行員1人当たりの利益率が高いなど経費率では三菱UFJ銀を圧倒してきたが、店舗の小型化やデジタル戦略などの改革の先行により、事業効率のアップに拍車が掛かっているのだ。
そして最近では、これぞ三井住友銀の「営業力の復活」と業界でささやかれているのが、トヨタ自動車グループ向けの融資拡大の方針である(特集『トヨタ「一強」の葛藤』の#3『トヨタ最大のアキレス腱、系列サプライヤー3.8万社の救済計画に死角』を参照)。
トヨタの主力行と自負する三菱UFJ銀の心中は穏やかではなかろう。愛知県の自動車部品サプライヤーでは再編機運が高まっており、生き残るサプライヤーへ融資を寄せる作業が加速している。三井住友銀は「地方銀行をメインバンクとする自動車部品メーカーに積極攻勢をかけている」(サプライヤー関係者)という。
いくらMUFGが海外に強いとはいえ、母国マーケットの貸し出しシェアの低下は看過できるはずもない。金融機関にとって、本業の「稼ぐ力」の衰えは、決算上の首位陥落以上に重大問題である。