「ロボットじゃない!」という抵抗感

  ただし、モチベーションには別の要因もある。なかでも特に重要なのは自律欲求だ。

 心理学者マレーは、だれもが持っている心理的欲求のリストを挙げているが、そのなかに自律欲求がある。自律欲求とは、強制や束縛に抵抗し、権威から離れて自由に行動しようとする欲求のことである。失敗への不安の解消だけでは、モチベーション全体の高まりは期待できないが、自律欲求が満たされれば、かなりモチベーションが高まることが期待できる。

 モチベーションを低下させる上司はどんな上司かと従業員たちに尋ねると、多くの人が挙げるのが、いわゆる自律欲求を打ち砕く上司だ。

「ウチの上司の口癖は、『つべこべ言わずに、言われたことをやってればいいんだ!』なんです。ちょっと質問しても、すぐにそんな言い方するから、モチベーション下がりまくりです」という人がいる。

「こうした方がいいだろうと自分なりに工夫して、実際にそれでうまくいっても、工夫に気づいた上司が、『なに勝手なことをしてるんですか、言われたとおりにやってください』って言ってくるんです。言い方は丁寧でもやる気なくなりますよ。こっちはロボットじゃないんです」と憤りを隠せない人もいる。

 管理職や経営者からすれば、指示通りに動かすのが効率的だし、安心だ。個人の工夫でうまくいくこともあるものの、それを認めると失敗の余地も生じてしまう。個人の工夫や判断の入り込む余地を最小限にとどめることで、仕事に不慣れな従業員や思慮の浅い判断をしがちな従業員、臨機応変の対応ができない従業員が冒しがちなリスクの予防にもなる。でも、そこがモチベーション・マネジメントの落とし穴にもなるのである。

 仕事のマニュアル化は、ある意味では、「言われたとおりにやればいい」「勝手なことをするな」と言ってモチベーションを低下させる上司と同じ機能をもっている。マニュアル化によって、効率化やリスク予防はできても、従業員のモチベーションを低下させることになっているかもしれないのだ。