企業の多くが競合との差別化に頭を悩ませている。商品やサービスに新たな機能を付加させることで差別化を試みても、競合に追従されてしまうことも少なくない。どうすれば「真の差別化」が実現できるのか。根強いファンが多いラーメン店「ラーメン二郎」にそのヒントがあると筆者は考える。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 牧田幸裕)
多くの日本企業が
「機能付加合戦」で疲弊している
世界のMBAで最も使用されているマーケティングの教科書『マーケティング・マネジメント』の著者であるフィリップ・コトラーは、競争上の4つの地位での差別化について、チャレンジャー企業は差別化を推進し、リーダー企業は模倣と同質化を推進すべし、と述べている。多くの日本企業は、これまでこの方針を愚直に実践してきた。
でも、何か違う。日本企業の9割は、無駄な消耗戦を行っているだけだ。どういうことなのか。
日本企業の商品企画や研究開発の現場では、差別化を機能付加で考える場合が多い。自社の技術を用い、競合企業にない機能を追加することで、差別化を図ろうとする。そして、競合企業では、その機能付加に対して「じゃあ、ウチもその機能を追加しよう。できれば、もっとより良く」と号令がかかり、半期または四半期のモデルチェンジで、機能付加に対応することになる。
その結果、
(1)機能付加による差別化の賞味期限は、わずか6カ月、または3カ月
(2)機能付加合戦に陥り、必要な機能が程よく装備された「多機能製品」ではなく、「過機能製品」ができあがる
商品企画、研究開発にコストをかけたにもかかわらず、差別化の賞味期限は6カ月、または3カ月。ROI(Return on Investment、投資対効果)は極めて悪い。これが多くの日本企業の商品企画、研究開発の現場の現実だ。