QoAの新イヤホン「Adonis」は、木材をCNCで削り出したシェルに、カスタムイヤホンで用いられるレジン製のフェイスプレートを付けた独特の工法で作られたイヤホンだ。命名の由来はギリシャ神話でアフロディーテが恋に落ちたとされる美青年で、直径1kmほどの地球近傍小惑星のひとつでもある。

 同名のカクテルもある。QoAは製品名にカクテルの名称を採用しており、直接の由来はそこにあるようだ。

 木材もレジンも、イヤホンではよく用いられる素材だが、木材をベースとしながら、デザイン面でのアクセントとしてレジンを組み合わせる例はあまりない。ブルーを基調としたカラーは、木製シェルの特徴を生かし、木目の風合いを生かした塗装が施されている。ワンポイントでグリッター(ラメ)をあしらい、アクセサリー感覚で楽しめる点も魅力だ。

 バランスド・アーマチュア型ドライバー2基にダイナミック型ドライバーを組み合わせたハイブリッド構成で、8芯で太目の5N無酸素銅ケーブル(OCC)を採用するなど、音質にもこだわった作りになっている。

アンバサダーにはMay'nさんが就任

 そして、このAdonisのアンバサダーには、歌手のMay'nさんが就任。複数のサンプルから好ましい音を選んでもらったり、デザインについての意見も反映したりしながら、最終製品が完成したという。

 Adonisの予約はすでに始まっており、大手量販店・ヘッドホン専門店などで購入できる(実売価格2万円強)。Adonisの公式サイトなどで写真を見るとその美しさが実感できるのではないだろうか?

 QoAはQueen of Audioの略。このあたりは、QoAでAdonisの開発に加わった女性2名の感性が大いに発揮されたところだと思う。

 編集部では発表に先立ち、May'nさんのコメントを聴くことができた。Adonisは、青を基調にしつつも、裏側にオレンジやピンクも重ね、色合いの変化を楽しめるもの。May'nさんは15周年を記念して、それぞれの彩りが異なる15通りの楽曲を収めたミニアルバムをリリースしたばかりということで、その情報を踏まえつつ、Adonisについて聞いた。

青のようでいて、一体何色なのだろうと思わせるカラー

── QoAの新製品「Adonis」のアンバサダーに就任、おめでとうございます。まずは、このプロジェクトへのかかわりから聞かせてください。

May'n QoAの一番新しいイヤホンが発売されるということで、デザイン決定の前段階からプロジェクトにかかわらせていただいています。音質だけでなく、「どちらの色が好みですか」「どのデザインにしますか」といった質問に答えながら、私の意見を取り入れてもらいました。(そういう経緯もあって)個人的にも、絶対に使いたい仕上がりになったと思います。

 シックだけれどおしゃれで、ワンポイントもあって、ファッション面でも、あまり見たことがないかわいさが気に入っています。もともとシンプルなデザインが好きなほうですが、シンプル過ぎてもダメで、シンプル&おしゃれみたいなものがいいと思っています。

 Adonisはシックな青の色合いをベースにしつつ、ラメが入っていたり、木目の感じもあって、大人のあそびどころを感じさせてくれる製品ですね。表面の色合いも、複雑な変化があって空を思わせるような仕上がりです。青のようでいて『一体、何色なんだろう』と思わせる特徴あるカラーだと思います。

 青は、私自身も好きな色で、プライべートのファッション、小物類などでもでついつい選んでしまう色なんです!

May'nが歌えば、May'nの曲になる

── Adonisは色合いに複雑な変化があるとのことですが、先月リリースした「15Colors」も、さまざまな彩りが楽しめるミニアルバムです。

May'n 15Colorsでは、私のこれまでの活動を振り返りつつ、ダンスミュージック、ロック、ポップなど様々な種類の楽曲をジャンルレスで歌わせていただくアルバムになりました。これまでのアルバム制作では、先にシングルでリリースした曲を入れるといったことが多く、ダンスミュージックでもロックに寄った味付けにするなど、May'nらしさをイメージさせるものが多かったんですね。

 でも、15Colorsでは“企画ミニアルバム”だからこそできる、振り切った作品を目指しました。ボーカリストとしての自分の声、そして、その可能性を思いっきり楽しみたいという想いもありました。例えば、ソウルの楽曲は好きだけど、これまではそこに振り切らず、あくまでもMay'nのテイストを残しながら収録をしていました。

 そういうことを考えず、ソウルに振り切ったら、自分のボーカルはどうなるんだろう? そういったことを重ねるうちに、自分自身でも知らないMay'nの側面に気付けた。そして、15周年を迎えたいまでも、新境地が開けるような楽曲作りができました。

── 15周年だから15曲。そして楽曲も和のテイストからダンスミュージックまで多彩です。それがMay'nという歌い手によってつながり、調和していく感じが新鮮でした。

May'n 特に“15Colors -soul tracks-”と“15Colors -nu skool-”では、曲ごとにクリエイターさんが異なり、それぞれの世界観があります。だから、ディレクション、テイク、そしてエディットまで、すべての部分をお任せしたいというこだわりがあって、それにどっぷりとつかりたいという想いがありました。

 キャリアを重ねるなか、私自身 “May'nらしさ”や“May'nはこうあるべき”といった、自分の中にある“May'n像”を前面に掲げていた時期がありました。デビューしてからちょうど10年かそれより少し前。そういうロックを中心とした盛り上がるナンバーというか、いかにもMay'らしいナンバーがあって……。

 もちろん、それ自体は悪いことではなく、いまでも大好きな曲ですが、アタックを付ける私、しゃくってビブラートを掛ける私、それが “May'nっぽい”と自分でも感じていたからこそ、そこにプライドもあったし、それを前に打ち出していました。でも、最近は何をどう歌っても“May'nが歌えば、May'nの曲になる”って考えに変わってきています。だからこそ、いろんな歌い方にチャレンジしてみたい、いろいろな歌い方ができるアーティストでいたいという気持ちになって……。だから、ここ最近は意識的にビブラートをかけるのか、取るのかといった選択肢も持つようにしています。

 「15Colors」では、そういう従来のスタイルからの脱皮というか、従来のMay'nの歌い方にこだわらず、引き出しをどんどん増やしていこうというのがテーマです。また、ボーカリストとして“もっと声で遊んでみたい”という気持ちも押し出しています。ファルセット(裏声)と地声の間ぐらいのミックスボイスを多用する曲など、いままでにない楽曲にもチャレンジできたし、「私にもこういう声が出せるんだ」「こういう歌い方もあるんだ」という発見もありました。

“音を抜いてみようかな、モード”になっていて……

── May'nさんの声質は、芯があって、細く絞ったようによく通る印象があります。ミックスボイスは対照的で、もっと柔らかく広がる感じです。使い分けで意識したことはありますか?

May'n これまでのシングルで多かった、ロックナンバーみたいなものでは、勢いやアタックの強さが求められます。地声を張るなど、強い歌い方が中心になりますね。私自身、それを得意としてきたのですが、もっと肩の力を抜ける音楽にもチャレンジしたいと思っています。また、音を詰め込んで盛り上がれる楽曲ではなく、ちょっと“音を抜いてみようかな、モード”になっていて……。みんなに落ち着いて聞いてもらえる楽曲を増やしたいと考えていました。アタックの強い曲と歌い方にこだわらず、ミックスとか頭声なども取り入れ、楽に歌える自分でいたいなって思ったりもしています。

── そんなチャレンジが反映された曲のひとつが英語歌詞の曲「Digital Flower」でしょうか?

May'n はい。ミックスボイスをここまで積極的に使った曲は初めてでしたね。MiliのYamamoto Kasaiさんに提供いただいた楽曲で、Miliならではの世界観やアカデミックなディレクションが生きた作品になりました。May'n楽曲をこれまで手掛けてきたスタッフによるディレクション、そして私自身の音作りとは、大きく違った刺激や発見がある曲でした。

── Digtal Flowerが収録されている“15Colors -nu skool-”には、和のテイストを感じさせる「春夢」のような曲もあり、個人的には3枚の中で一番、面白さや新しさ、方向感の広がりを感じさせるアルバムだと感じました。

May'n ここ数年続けてきた、ボーカルのトレーニングが生きた面もあると思います。一方で、どんな歌い方をしても、私が歌えば“May'nの楽曲になれる”という手ごたえや自信も得られました。15周年というメモリアルな年にこの作品を出せたことは、とても大きなことだったと思います。

── May'nさんの魅力のひとつにライブがあります。レコーディングとライブではアプローチに変化がありますか?

May'n ライブとレコーディングで意識的に歌い方を変えることはせず、どちらも大切にしています。ただ、ライブはその場の空気感とともに楽しんでくれているから、ある種ノリで伝えられる部分もあって、その場ならではの気持ちも乗ります。そこが良さですね。また、何度も繰り返し歌うことで、それぞれのステージから見た景色があって、そこにまた新しい想いが加わっていきます。CDは最初の完成形、それをどんどん育てていくのがライブと言ってもいいかもしれません。

 CDや配信では、それぞれの環境で聴いてもらいますし、TD(トラックダウン)やミックスにおいても各クリエイターさんが細かいこだわりを持って作品作りをしています。私の歌い方もそうですし、それぞれの楽器のエディットやミックスもそうですし。

イヤモニとリスニング向けイヤホンの違い

── ライブではイヤモニを使用されていますよね?

May'n ライブではもちろんイヤモニを使っていますが、あくまでもパフォーマンスをモニターするためのものなので、ボーカルの聞こえを邪魔しない音作りになっています。ただ、私の場合、完全にカットすることはなく、バランスは割と保っているほうだと思いますね。会場の雰囲気もより近くに感じたいので、歓声なども返してもらうようにしています。ただ、ボーカルと重ならないよう、特定の周波数帯のスキマを空けるというか、ボーカルの聞こえに影響するようなスネアドラムなどは絞って返すことが多いですね。

 ここはアーティストごとにこだわりがある部分で、人によって「この楽器の音を聴きたい」だったり、「ほかの音は聴きたくない」といった差が出る部分だと思いますね。

Adonisはいわゆる“シュア掛け”で利用するタイプの製品だ。

── Adonisの音はイヤモニで聴く音とはまた異なるわけですね。

May'n プライベートで使うなら、ボーカル込みですべてがバランスよく配置されているものがいいです。私の楽曲は、ある意味ジャンルレスで、ロックもあるし、R&Bもあるし、ポップスもある。「どの楽曲もバランスよく聞きやすいものにしたいな」という想いはAdonisを試聴し、複数のサンプルから最終的な音を選ぶ際にもお話しさせていただいたことです。

── バランスの良さが選択の理由ということですね。

May'n はい。オールジャンルいける音になっていると思います。ただ、自分自身のこだわりとして、あまり上に行き過ぎず、ちゃんとローがある感じは意識しました。もちろん上もちゃんと聴きたいですが、バランスとしては、完全にフラットというよりは、やや中域より下が強めで、重心がやや下がっている音が好みですね。

 もちろん、ハイの部分もきちんと聞こえますが、ここは耳あたりが心地よく、滑らかな高級感ある音になっていると思います。ローも滑らかさを兼ね備えていて、ビートはちゃんと感じたいし、密度感もあるけれど、変に硬い感じにはならないようにしています。スピーカーと違ってイヤホンでは、移動中に長時間着けることも多いですし、あまりローが強すぎると疲れてしまう印象があるので。

May'nの曲を聴くなら、間違いのないイヤホン

── 試聴はやはりご自身の楽曲を使用されたのですか?

May'n 「15Colors」の制作タイミングより前だったのですが、試聴は全部自分の曲でしています。ロック代表としては『graphite/diamond』、あと、『NEW WORLD』の曲はR&B感がありつつポップス感もあるので、そういう楽曲を選んだりしましたね。かなり幅広く自分の曲を聴き込んだと思います。

 TDをする際には、真ん中にボーカリストである私がいて、少し離れた位置にバンドがいて、ストリングスもいる。そういうミュージシャンとリスナーの距離感をちゃんと出すことを心がけています。そのうえで、「もっとミュージシャンに近づきたいです」といった要望を出していくわけですが、そういうちょっとした空気感の違いとか、楽器の広がり感とか、現場でこだわった部分がちゃんと聴ける。だけどライブハウスのように重たいロー感はない。本当にちょうどいいバランスになっていると思います。

── 自分で作った曲のこだわった部分が再現できているという意味で、間違いない音のイヤホンと言えるかもしれないですね。

ケーブルにもこだわったイヤホンだ

音作りに終わりや正解がないと実感できた

── イヤホン開発にかかわられて感じたことがあれば教えてください。

May'n イヤホンができていく過程を知ることには刺激がありました。「デザインって、こう仕上がっていくんだ」という体験ができましたし、音も複数の候補があり、「どれもいいけど、この音が好きかな」といった意見を出して選ぶことができました。

 特に、音作りには本当に“終わり”や“正解”がないことを実感しました。ここが私自身の刺激にもなったし、何より「オーディオって楽しいな」と思えた部分です。聞いたサンプルは、全部良かったんですよ。だけど、好みの差は出る。それを探すのが面白いし、J-POP、ロック、クラシックなど、自分が一番よく聞く音楽はどれかで、合うものも違ってくるはずです。それぞれの環境、好きな音楽に合わせて、最高の音を選ぶのは本当に楽しいなって思います。

 もともといい環境で音を聴くのが好きだったのですが、この出会いによって改めて、その素晴らしさを教えてもらったような気がします。

── ご自身の曲をAdonisで聴くとしたら、どこに注目してほしいですか?

May'n 「15Colors」で言えば、”15Colors -unplugged-“ですね。生楽器を使っているので、ストリングスのエアー音とか、ギターの本当に聞こえるか聞こえないかぐらいの微妙な指の感じ、弦にほんの少しだけ触れる感じなどが、このイヤホンなら楽しめると思っています。ここがスピーカーから何となく音を聴くのとは全然違う点です。

 「そうそう、ここがこだわっていた音だ」という気付きがあって、現場で作業を進めていたときの記憶が蘇ったりもします。音楽を作っている側から見てもお墨付きを与えるような仕上がりになっていると思いますよ。

── 最後にアンバサダーに就任された抱負をお願いします。

May'n 私自身、嬉しい気持ちでいっぱいです。QoAは女性の方が立ち上げたブランドだけに、女性なら絶対にかわいいと思えるデザインになっていると思います。でも男性でも使えるデザインだと思いますね。つまり、男女ともに使えるんで、私のファンの皆さんは、必ずゲットしていただきたいです! そしてこれが好評なら、アンバサダーを続けられるかもしれないので、ぜひMay'nのファンの皆さんは、たくさん買ってください~(笑)。

── Adonisを手に入れた後は、イヤピースを交換してみるなど、自分好みのカスタマイズに挑戦するのも楽しいかもしれません。本日はありがとうございました!

彩りあるデザインのイヤホンで、彩りある15曲を

 15周年記念として、11月から配信サイトで提供している“15Colors”は、15曲を「15Colors -soul tracks-」「15Colors -unplugged」「15Colors -nu skool-」の3つのミニアルバム(各5トラック)にまとめたミニアルバム。soul tracksは自身のルーツともいえるダンスミュージックを集め、unpluggedは声をクローズアップ、ネットで話題のサウンドプロデューサーとコラボしたこれまでにない楽曲に挑戦している。

 15Colorsというアルバム名が示す通り、さまざまなプロデューサーと協業し、それぞれ味わいの異なる15通りの彩りを持つ楽曲が用意されている。各楽曲のダイジェストはYouTubeで試聴できるので、興味がある人は視聴してほしい。

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