米国防総省の2021会計年度の予算は約7000億ドル(約72兆円)になるが、議会が国防歳出法案で約1億ドルのミサイル用予算の配分を誤れば、中国に対する防衛能力が損なわれかねない。こうした小規模な個別分野の歳出が大きな違いを生むのはなぜだろうか。その答えは太平洋での大国間の競争をめぐる米国の戦略と関連している。中国は同国東岸を中心に何千基もの地上発射型精密誘導ミサイルの配備を進めてきた。同国は、台湾侵攻を決めた場合を含め、米海軍の対応能力を抑制するためにこのミサイルを活用したいと考えている。米国は、1987年にソ連との間で結ばれた中距離核戦力(INF)全廃条約によって、中国が保有しているのと同様の能力の開発をこれまで数十年間禁じられてきた。同条約は射程500~5500キロのすべての地上発射型ミサイルの開発・配備を禁止するもので、その中には核ミサイルも通常のミサイルも含まれていた。米国の精密誘導ミサイルは航空機と艦船から発射されるものに限定されていたため、その配備コストははるかに高かった。