給付金Photo:PIXTA

新型コロナウイルス感染拡大の“第3波”が止まらず、自殺者が増加し、困窮者が急増する恐れが高い。政府の新型コロナ感染症対策分科会メンバーの経済学者である小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹が緊急寄稿し、マイナンバーによるリアルタイムな所得把握が不要でスピーディーな「所得連動型現金給付」を提案する。(東京財団政策研究所研究主幹 小林慶一郎)

第3波で企業は窮地、自殺も増加する中
事前審査なしに現金給付する方法はある

 コロナ第3波のために、経済活動に急ブレーキがかかっている。春からの損失の累積で企業の経営体力は弱っており、倒産や解雇で生活に困窮する人がこれからますます増えると懸念される。

 秋以降、自殺者の数も増えており、10月には自殺者数は2000人超となり、昨年同月比で800人以上も増えている。中でも非正規雇用など経済的に弱い立場になりがちな、女性の自殺者の急増が指摘されている。

 個人の生活を支えるために、国が個人に対して給付金を支給することが再び必要になってくるかもしれない。前回の特別定額給付金は全国民に一律10万円給付だったので膨大な財政コストをかけた割には生活困窮者の救済効果は小さかった。生活に困窮した人にピンポイントで効果的な支援をする方法を考える必要がある。

 いかにして迅速に、効果的に、給付金を必要な人に支給するか(同時に、必要のない人に給付金を支給しないようにするか)という方法については、今年の3月頃から世界の経済学者たちが繰り返し提言していた。それが「事前審査なしで給付金を迅速に支給し、年末の納税時に所得に連動した事後調整を行う」という、所得連動型現金給付という方法である。