スウェーデンのゴットランド島にある陸軍射撃訓練場では、松林の中に木製の標的が点在する。その形は外国からの侵略者を表しており、その顔は悪意にゆがんでいる。標的には所属を示す記章も国旗も付いていない。しかし、昨年秋の訓練で標的に機関銃の銃弾を浴びせたスウェーデン軍の新兵たちは、敵が誰なのかを正しく認識している。それはロシアの第76親衛空挺(くうてい)師団だ。ウラジーミル・プーチン大統領の下、ロシアの外交政策がこの10年間で一層強硬になる中で、スウェーデンはゴットランドの防衛強化を進めている。同国陸軍は、ロシアの侵攻が始まる際にはバルト海を隔てた地に駐屯する第76親衛空挺師団の兵士が、パラシュートでゴットランドに降下してくる可能性が高いと考えている。両国はともに、この島を支配する者がバルト海南部の艦艇の航行を支配することを知っている。