貯金してためた40万円を元手に、中学2年生のときから始めた株式投資で累積利益4億円を達成した、かぶ1000氏。特集『資産1億円の作り方』(全19回)の#2では、専業投資家としての30年超に及ぶ投資歴から得た投資の教訓について、かぶ1000氏に聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
「生存者バイアス」がかかっている
SNSでの投資情報には注意が必要
――個人投資家が増えるにつれ、投資に関するさまざまな情報が溢れています。
アベノミクス以降、ツイッターなどSNSを中心に個人投資家が情報発信する流れが、株の世界にも広がってきました。SNSでは「○○株で○○円もうかった」などのツイートを見掛けますが、個人的にはこういった書き込みをそのまま鵜吞みにしてしまうのは注意が必要だと思っています。なぜなら、もうかったなどのツイートは発信されやすい一方で、損したとか退場してしまったなどのツイートは発信されにくく、そこには「生存者バイアス」が掛かっている場合があるからです。つまり、もうかっている人中心の情報発信が多くなるので、一見みんなもうかっているのではないかと勘違いしてしまうので注意が必要です。
また、最近の株価の好調さから「1年で資産が○倍になった!」などのツイートも見られるようになりましたが、どうやってそうなったのかなど正確に書かれていない場合もあり、実態は高いレバレッジを掛けていたり、集中投資などでたまたまうまくいったりしてそうなった可能性もあります。実際にはそう簡単に高いパフォーマンスを上げたり、それを維持したりしていくのはなかなかできることではありませんので、安易に信じてまねをするのは注意が必要だと思います。
――そうした情報に引っ掛かり、やはり株式投資はよくないものだと思う人も少なくありません。
日本は短期で利益を出すことを目的に株式投資をする人が多い気がします。市場が活性化されるという意味において、一つの役割を果たしているといえますが、私自身は、株式投資は投機ではなく投資として向き合っていくべきではないかと考えています。株の世界は残念ながら全員がもうかるとは限りません。いろいろな思惑が飛び交う中で、どのように自分自身が株式投資と向き合っていくかをしっかり考えることが大事だと思っています。
――どのように向き合えばよいでしょうか。
株式投資の良いところは、長く続ければ続けるほど企業成長や利益の積み上がりによる企業価値の増大により、きちんとリターンが伴ってくることです。これまでのトラックレコードでいえば、おおよそ年平均7%程度のリターンが期待できます。ただし、そのためには株価変動の要素を打ち消すために長く投資を続けることが必要です。目先の株価を気にするのではなく、投資を長く続ける習慣を身に付けることが大切だと思います。
例えば、誰もが日常的に歯磨きをするように、ニュースを見たり、街中で流行っているものを見たりするときに「この会社は伸びるかな?」といったことを日常的に見て考えるようになることですね。
――さまざまな投資法があります。
自分に合った投資法を見つけて、コツコツと長く続けていくことが大切だと思います。人のまねをしてみて、自分に合う形に組み替えるのもいいと思います。世の中には株で成功した人がたくさんいます。その中からどれが自分に合う方法なのか、いかに落とし込んでいくかということが大切ではないかと思います。
――いろいろな方法を試してみるしかないと。
そうですね。私も1988年から株式投資を始めましたが、現在のバリュー株(割安株)投資に行き着くのに10年ほどかかりました。ただ、インターネットやネット証券すらなかった当時とは異なり、今は情報が溢れているのでもっと短期間で自分に合った方法を見つけることができるかもしれません。もっとも情報が多過ぎるが故に、どれが良いのか選択肢が多過ぎて余計に迷ってしまう可能性はあるかもしれません。
――情報の取捨選択はどのようにされていますか。