これは、政治家、経済学者も含めた人文社会系の人が2009年の新型インフルエンザのパンデミックのときに、彼らの視点から現実的な危機感を持って考察できなかったことが大きいのではないでしょうか。

 例えば移動制限したら経済がどのくらい落ち込むのか、人間が自宅に巣ごももりしていたらどのくらい気分が落ち込むのか。あとはDV(ドメスティックバイオレンス)の問題、社会保障など、本当は09年に考察を残しておけばよかったと思うのですが、ほとんどそういう話は出てきませんでした。
彼らは20年になって、初めてパンデミックに対峙したと言っても過言ではありません。

西村 考察していない、あるいは総括していないのは感染症分野も同じです。変異株のこともあって、今、水際対策と盛んにいわれていますけれども、09年の時点で、鎖国に近い措置、しかもウイルスが入ってくるか来ないかの超初期でないと防疫に寄与しないことはすでに明らかになっていました。あのときは宇宙服のような感染防護具を着た職員が物々しく空港内を走り回る様子が頻繁にメディアで取り上げられていましたが。

写真:西村秀一西村秀一(にしむら・ひでかず)/医師

 総括していなかったから教訓が生かせていないと考えられるもう一つの要素が、医療体制です。

日本のコロナ対策は間違いなく成功
問題は「医療体制」だけ

 09年の新型インフルエンザのときも、今回のコロナの第2波のように、夏に患者数が急増したものの重症者は少なかった。一方冬のピークは感染者数はそれほどではなかったけれども、重症者が夏よりもずっと多かったのです。

 呼吸器疾患を引き起こす感染症が冬に重症化しやすいのは当然で、第2波後に感染者が減ったタイミングで冬に備えて重症者向けの病床やスタッフの確保などの補強を何としてもしておくべきでした。

 でも日本は、感染拡大というそれ一点から見れば、間違いなく「成功」していますよ。