自動車産業におけるA&Dの好例は、GMによるクルーズ買収だ。クルーズの独立性を守ったことも、事業の開発が進んだ重要な要素だ
自動車産業におけるA&Dの好例は、GMによるクルーズ買収だ。クルーズの独立性を守ったことも、事業の開発が進んだ重要な要素だ Photo:picture alliance/gettyimages

 前回、事業イノベーションを進めるためにスタートアップ企業のM&A(企業の合併・買収)を積極的に検討すべきだと述べた。

 M&Aを実際の成長につなげるためには、買収先のスタートアップが自社にない最先端の技術・製品・ビジネスモデルを持つ企業であること、さらに買収で獲得した価値をてこに、自社の事業を開発(Develop)しなければならないことが多い。これは、M&AとR&D(研究開発)を組み合わせたA&D(Acquisition & Development=買収と開発)というアプローチだ。

 ここで思い出されるのが、ネットワーキング機器の大手、シスコシステムズだ。同社はコンピューターの次にはネットワーキングの時代へと大転換すると予見し、1984年に創業。ルーター、ATMや通信スイッチなど、インターネットが普及する中で成長を続け、現在では企業価値は20兆円を超える。その過程では、通信インフラの多様化と進化に対応するため、200社以上のスタートアップ企業を買収して自社の戦略に組み込んできた。シスコはA&D戦略のお手本だ。

 そして今、ネットワーク分野の大転換と同様のことが起きつつある業界の一つが自動車産業だ。自動車産業は内燃機関から電動に転換し、さらに自動運転や移動のサービス化(モビリティー)のように、ソフトウエアとネットワークが主体になっていく。シスコのように自動車産業においても、既存企業が大きな転換を図るためにA&D戦略が有効だ。