『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「仕事でミスをして泣いてしまった」人に、周囲はどう接するべきかへの納得回答Photo: Adobe Stock

[質問
 泣く、という行為を上手くコントロールする術はありませんでしょうか

 初めまして。読書猿さんのお言葉、勉強になり、助けられています。

 私の悩みは、「泣く」ということに関してです。

 昔から、物覚えが悪くミスが多い私は、周りから怒られないようにするには、というのを考えて行動してきました。なので、先輩や上司から注意を受けるのが怖くて仕方ありません。

 社会人一年目なので、ミスするのは当たり前だと頭では分かっているのですが、注意を受けるときの「注意を受けている」という現状が怖くて、反省すべきである注意の内容が頭に入ってきません。「もしかして私は誰よりも頭が悪くて呆れられているんじゃないか」と考えてしまいます。

 どんなに些細な内容であったとしても、心の何処かに引っかかると涙が出てきます。周りはとても優しい方々ばかりなので、傷つけないよう丁寧に注意してくれますが、その「気を遣わせている」ことさえも情けなくて恥ずかしくて、更に涙が出てきてしまいます。

 どうにか泣きそうなのを気付かれないよう素数を数えて気をそらすなどしたのですが、そうすると、もっと注意されている内容が入ってきません。髪を貞子にしてみたこともありますが、多分バレています。

 家族や友人に、「今日こんなミスをしてしまった」と話した際の相手のアドバイスや慰めにも涙がにじむ始末です。

 泣く、という行為を上手くコントロールする術はありませんでしょうか。

 周りの方々にこれ以上気を遣わせたくありませんし、もう社会人なのでただの注意で泣くようなことも無くしたいです。

 なんとも見栄っ張りで甘えた、くだらない悩みだとは存じますが、叱咤、助言等いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

泣くことは不問にして、本当に注意すべきことに目を向けて。やがてあなたは、きっと素敵な先輩・上司になれるはず

[読書猿の回答]
 泣くことは、強いストレスがかかった時、ストレスを下げるために生じる生理反応であり、直接意思の力でコントロールすることが難しいものです。

 むしろ、他人であれ自分自身であれ、泣くことを責めてしまうと、余計ストレスがかかり、それを下げようとさらに泣くことが止まらない悪循環に陥ります。

 ストレスの元や泣きたくなることを全て取り除くことは不可能ですが、泣くことの二次災害をできるだけ小さくし、ストレス→泣く→ストレス→…の悪循環を最小限に止めることはできるかもしれません。

 こうした悪循環を理解している人なら、泣いてることは不問にして(咎めても事態は余計に悪化するだけですから)、注意すべきことだけを注意するでしょう。きっとあなたの周囲の人たちがそうするように。あるいはあなたがいつか先輩になり上司になったその時に、泣いてしまうことに悩んでいる後輩や部下にもそうするように。

 泣きながらもすぐにミスの修正に取り掛かる(未来の)後輩や部下を、言い換えれば、自分がどう思われるかよりも今何をすべきかに注力できる仕事仲間を、あなたはきっと責め立てはしないでしょう。

 この未来の後輩や部下は今のあなたです(まだこの域に至っていないとしても、そうなることはできます)。

 あなたが目指すべきところは、未来のあなたが未来の後輩や部下にするように、あなた自身に対してもよい上司のようにふるまうこと、つまり泣いてることは不問にして、注意すべきことだけを注意し、何をなすべきかに注力できるよう、自分をサポートできるようになることです。

 最初は難しいかもしれません。しかし幸いにも、あなたが将来そうなるべき、そして今も手本とすべき職場の上司や先輩たちが、あなたの周囲にはいるはずです。彼らがあなたにしてくれることを、あなたもあなた自身にできるように、少しずつでいいので目指してください。

 そして今かけている迷惑や支えてもらっている恩は、あなたに続く人たちにいつか返すことができるように、今はあがいてください。

 それが未熟者であるあなたが、見込みある未熟者になる道です。