当事者意識や「やり遂げる意思」の不足、未来への展望の欠如…。情報はいくら持っていても、それだけでは力になりません。特にこのコロナ禍においては、情報を追いかけるだけでは疲弊してしまいます。では、私たちはこうした力を身に付けるためにどうすればよいのでしょうか?新型コロナウイルスのワクチン接種に関する研究結果を次々と報告し、世界の注目を浴びているイスラエルですが、ワクチン接種の統括者が受けていたイスラエルのエリート養成プログラム。そして、新型コロナウイルスの感染自体をかなり早い時期から抑え込むことに成功している、台湾のデジタル化政策。この二つの事例をもとに考えてみましょう。(一橋大学名誉教授 石倉洋子)
イスラエルと台湾の事例から見る
「当事者意識」や「やり遂げる意思」の育て方
危機感のなさ、当事者意識や「やり遂げる意思」の不足、世界観や未来への展望の欠如、実験や試行錯誤へのためらい、スピード感の欠如……。
これを聞くと、皆さんは「ドキッ」としますか?あるいは「自分とは無縁だ」「どこの組織のことか」「誰のことか」と思われるでしょうか?
最近、セミナーやトークの依頼を受ける時に、主催者からこれらを「強調してほしい」と言われることが増えてきました。
企業セミナーの場合は、「自社に今不足していると思われるから」という理由で、また、公開セミナーの場合は、「主催者の問題意識としてそれらが必要と思うので」という理由です。こうしたテーマは、かなり大きく重いものなので、セミナーやトークではさまざまなやり方で、できる限りカバーしようとします。
一方、参加者からセミナー終了後や、途中の質疑応答でよくいただくのが、「もう少し具体的な方法やアイデアを知りたい」というものです。
例えば、「テクノロジーの知識やスキルを得る」「コミュニケーションの力をつける」「問題解決力やデザイン・スキルを身につける」など、これらが必要なことはわかるけれど、どこから手をつければよいか、どうすれば力がつくか、教えてほしい、という質問です。
今回は、こうした質問に関して、私が最近見聞きした二つの事例で具体的に説明したいと思います。
一つ目の事例は、世界最速で新型コロナウイルスのワクチン接種を実施し、その効果を示す研究結果を次々と報告していることで今、世界でも関心を集めているイスラエルの事例。
もう一つの事例は、そもそも新型コロナウイルスの感染自体を「デジタル化」を駆使して、かなり早い時期から抑え込むことに成功している台湾の事例です。
この二つの国では、どのような教育や訓練をしているのでしょうか。その背景を知ることによって、前述の疑問へのヒントが得られるのではないか、と考えています。