「文春一強」を元編集長が危惧する理由、奈落の底に沈んだ過去の教訓元編集長が「最強文春」を危惧する理由とは? Photo:PIXTA

文芸春秋に入社して2018年に退社するまで40年間、『週刊文春』『文芸春秋』編集長を務め、週刊誌報道の一線に身を置いてきた筆者が語る「あの事件の舞台裏」。このほど、ダイヤモンド・オンラインの連載「文春は、お嫌いですか?元編集長の懺悔録」に加筆して、『文春の流儀』(中央公論新社)を出版した。40年の経験から見た「最強文春」の意外な死角とは……。今回は、連載では明かされることのなかった文春時代の苦い経験について語った。(元週刊文春編集長、岐阜女子大学副学長 木俣正剛)

かつてあった「文春独走」時代
元編集長が語る、奈落の底に沈んだ経験とは

「週刊文春が絶好調」とか「文春政局」とか呼ばれるのはOBとしては、とてもうれしいのですが、不思議なもので、好調と言われると、本気で心配になってしまうのです。こんなことを言うと、総務省接待問題、五輪開会式の不適切演出問題など毎週話題を独占しているのに何が心配なのか、と不思議に思われるかもしれません。

 創刊62年、私も40年文芸春秋に在籍していましたが、実は以前にも「最強」とか「独走」とか呼ばれた時期がありました。しかし、その都度、想像もつかない落とし穴があり、奈落の底に沈んだ経験が何度もあります。だからこそ、今度こそ「最強」が定着してほしいけれど、世間の反応が心配にもなるのです。