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米国のバイデン政権が、巨額の追加経済対策成立の勢いに乗り、インフラ対策などの公約実現に歩みを進めようとしている。危機を背景にした世論の団結を「大きな政府」への求心力として維持できるかが、バイデン政権にとっての勝負となる。行方には何が待っているのか。(みずほ総合研究所 調査本部 欧米調査部長 安井明彦)
「団結よりも強行突破」
巨額対策の成功に酔う民主党
春の訪れを告げる復活祭(イースター)が近づく米国では、3月27日から上院が2週間の休会に入る。下院は一足先に19日で本会議での審議を終えており、1月20日に発足したバイデン政権による議会運営の第一幕が閉じようとしている。
もっとも、バイデン大統領を擁する民主党は、第二幕での攻勢が待ち切れないようだ。イースターの休会を、バイデン氏の公約であるインフラ投資はもちろん、気候変動対策や公的医療保険制度の拡充、さらには移民制度改革など、民主党の積年の課題である大がかりな政策を、一気に成立させる計画づくりに充てるつもりだという。早くも下院では、目玉とされるインフラ投資の部分について、5月にも審議を本格化させる計画が浮上している。
民主党が浮足立つのも無理はない。バイデン政権の公約実現にとって、民主党が僅差の多数党に止まる議会の存在は、大きな障害になるはずだった。ましてバイデン氏は「団結」にこだわっている。公約の規模や範囲は縮小を余儀なくされる、というのが大方の見方だった。
ところがバイデン政権は、ほぼ当初の提案通りの巨額の対策を、共和党の反対を押し切って成立させた。団結を重視するはずのバイデン氏は、共和党議員の賛同を求めずに民主党のみでの強行突破に踏み込んだ。続くインフラ投資などでも、3兆ドルを上回る規模の提案が準備されていると報じられている。
バイデン政権は、様々な分野で「大きな政府」を推し進める政策を公約してきた。その実現に向けて、民主党の期待は高まるばかりだ。